平成15年(ワ)第2804号
損害賠償等請求事件
原 告 田 中 哲 朗
被 告 沖電気工業株式会社
準備書面(原告5)
2004年 12月3日
東京地方裁判所八王子支部
民事第3部1A係
御中
原告訴訟代理人
弁護士 大 口 昭 彦
第1 株主の質問について。
1, 被告社長篠塚は議長として
「質問は前を向いて行って下さい。演説ではございません」
とたびたび発言している。また、被告は陳述書による陳述の形で
「田中株主の質問は,質問というよりは演説というようなものでして」
「田中株主は質問するのではなく演説するつもりですから」などと主張している。(乙15号証3頁)
2,このことから、被告は株主が株主総会において行う「質問」を、あたかも小中学校において生徒が教師に対して行う質問と同様、知識の無いものが知識のあるものに「分からないことを尋ねる」ごときもの、「教えを請う」ごときもののであるかのように誤解していると推測される。
だからこそ「質問は議長の方を向いてのみ行うものだ」「質問は演説であってはならない」と考えていると推測される。
3,広辞苑には、質問は「疑問または理由を問いただすこと」と記されている。すなわち、「問いただす」のであり、「分からないことを尋ねる」ことではない。
4, 例えば、国会において、総理大臣の所信表明演説の後行われる代表質問等の「質問」は、総理大臣に「分からないことを尋ねる」のではなく所信表明の中の問題点を指摘し、「問いただし」それに対する自らの考えを他の国会議員や国民に示し、同意を求めることを目的としている。
5, 株主総会における株主の質問も、議長に対して「分からないことを尋ねる」のではなく、会社説明の問題点を指摘し、「問いただし」問題点に関する自らの考えを示し、会社役員に対してのみならず、他の株主に対し同意を求めることが当然行われるのである。
株主に向かって自らの持つ考えや情報を示し、語りかけることは、株主総会の目的に沿ったことであり、従って「質問」は同時に「演説」でもあり得るのである。(ただし原告が「演説」を行ったと主張するものではない)
6, 株主は、会社から示された情報と他の株主からの質問によって示された情報に基づいて自らの意志を決定し、議決に参加するのである。
7,すなわち、商法に定められた株主総会における株主の質問権とは、「分からないことを尋ねる」権利ではなく、同意出来ないことについて会社を「問いただす」権利である。
8,そうでないのであれば、株主総会に株主、会社役員が一堂に会する必要はなく、「質問」のある株主は書面で問い合わせ、会社も書面で回答すれば済むことであり、株主総会が開催される必要がないのである。
9,被告は、株主が商法にのっとって、会社を「問いただす」権利を有しているという認識がないため、不当にも答弁を安易に拒否してはばからないものと推測されるのである。このような被告の議事運営は本来の株主総会の意義を没却させようとするものであり、許されない。
第2 原告が排除された際の発言について
1, 原告が被告株主総会より物理的強制力により排除された際に発言していた内容は準備書面(原告3)の第1の1,@で述べた如く
「株主総会集中日に総会を開かないことについて採決を取って欲しい。採決を取らないので有ればその理由を述べて欲しい。」
という質問である。
2,原告はこの質問の前提として、株主総会を集中日に開くべきではないのでないかという質問を行った。
3,被告は、この質問が株主総会の「目的事項外」であると、本裁判に至って主張している。
4,しかし議長である社長篠塚は、上記質問が「目的事項外」であるとは一度も発言していない。そればかりか
「株主総会集中日でないかというご指摘でございますが、ご案内の通り決算日以降ですね、皆様方に計算書類を作成して監査をいたしまして、そして招集通知を作成する、こういった手続が当然の事ながら必要なわけでございます。こういったことを勘案して本日を決めさせて頂いているのでございますので、決して集中日云々ということはございませんので、ご理解頂きたい。」
という答弁を行ったのである。(甲第1号証 番号79)
5,社会通念上、株主総会開催日に関する質問が株主総会の目的事項であることを考慮するまでもなく、被告は答弁を行ったのであるから、この質問は本総会において「目的事項」として取り扱われたのである。
6,この質問に対する被告の答弁は上記のごとく、意図的に集中日に開いているのではないという趣旨のものであった。
7,何十年にも亘って毎年「株主総会集中日」という1年に1日の特定の日と、被告の主張する理由で選んだ日が一致することなどあり得ないことであり、これは誰が聞いても虚偽と分かる答弁である。
8,被告が本裁判の場に至ってもこの嘘を付き続けていることを、裁判所は曖昧に処理してはならない。
9,原告は虚偽の答弁に納得することが出来ず、虚偽であるから納得が出来ないという発言を行い、他の株主の同意を得る為に採決を要求したのである。
10,会社の答弁に納得がいかない場合、株主に同意を求める為に採決を要求することは株主に認められた権利であり、
「株主総会集中日に総会を開かないことについて採決を取って欲しい。採決を取らないので有ればその理由を述べて欲しい。」
という発言は、明らかに「目的事項」の質問である。
11,また、この質問は複数の企業の株主総会に出席したい株主にとって共通の利益がある質問である。
12,被告はこの質問に対し、採決を行わないばかりか、行わない理由の説明すら拒絶したまま原告を物理的強制力を持って排除したのである。
13,これは商法に規定された株主の質問をする権利、会社が答弁を行う責任を無視する違法な行為であることは疑いがない。
以上