平成15年(ワ)第2804号
損 害 賠 償 等 請 求 事 件

 原 告  田  中  哲  朗
 被 告  沖電気工業株式会社

準備書面(原告7)

   2005年7月11日

東京地方裁判所八王子支部
民 事 第 3 部 1A 係
             御 中        原告訴訟代理人
                   弁護士  大  口  昭  彦

第1 2005年度被告株主総会について

1 はじめに

(1) さる6月29日、本年度の被告の株主総会が開催された。
   この総会に於いて原告他の株主は、大分県湯布院町に於ける談合事件に被告会社が関連し、社員が有罪判決を受けるという大きな不祥事を起こし、これに伴って被告会社は、町の発注先からも外されるという大きな打撃を被ったことについて質問し、会社側の説明を求めた。
   これは、会社にとって大きな打撃であって、株主として黙過できないことは当然のことであるが、そもそもの企業の社会的責任、あるいは企業が真剣に取組むべきものとして近時強調されているところの、いわゆるコンプライアンス問題の観点からしても、重大な問題であると考えられたからである。

(2) しかるに驚くべき事に、被告会社側には、このような違法な企業活動による社会的責任問題の自覚はおろか、そもそもこれによって、会社の本来の所有者である株主に対して損害を与えたとの認識すらも全くなく、従って、株主に対する説明は、通り一遍の、甚だ形式主義的なおざなりなものでしかなかった。もちろん、そのような自体を惹起した事自体の問題性・企業体質の剔抉と、その解決のための対策等々については諫会い語られなかった。 

(3) そこで当然ながら原告ら株主は、更に真摯な、問題点に突込んだ誠実な説明・回答等を求めようとした。
   しかるに、被告会社、篠塚社長はこれらの質問を封じ、強権的に発言禁止にし、更には原告らを強制排除した。

(4) このような経過・事態には、被告会社の株主総会が如何に株主を無視した違法不当に運営されているかが如実である。
   従って2005年度の株主総会の経過事実は、本件訴訟で問題になっている株主総会問題の事実を認定し、法的評価を行う上でも、重要な間接事実となるものである。
   よって原告は以下に、この問題について論述する。

2 被告の、湯布院談合事件問題に対する説明

(1) 被告は本件において、原告の質問が目的事項でなかったことを、その質問に答弁を行わなかった理由にしている。
    株主総会の開催日に関する質問が株主に取って目的事項であることは間違いがないが、にもかかわらず、そのように応対したのである。
    そもそも被告は常に、被告にとって都合の悪い質問には「目的外事項」を御題目にして、答弁を拒否し、答弁を求め続ける株主を物理的強制力で排除してきたのである。今年、2005年株主総会においてもその行為を繰り返した。

(2) 2005年総会に於いて、湯布院町の談合についての事前の書面による質問(原告が行ったものではない)に答え、被告会社の田中専務が以下のように説明した。

 最後に、当社が2000年に落札いたしました、大分県湯布院町の防災行政無線工事に関するご質問でございます。
 この工事に関し、湯布院町に対し、住民監査請求、並びに住民訴訟が起こされたことは新聞報道で承知しております。
 本件に関連して湯布院町からの損害賠償のご請求など一切ございません。談合の(有無?)につきましては、最終的には司法の判断によるものではありますが、関係当局から捜査など、一切の接触はございません。
 なお本件を含め、刑法上談合に該当するものが存在するとの報告は受けておりません。
 事件に関連いたしまして、先ほど回答いたしました通り、従来にも増してコンプライアンスを経営の重要な方針として徹底してまいります。
 以上事前に書面で頂きましたご質問について回答申し上げました。

(3) この説明は、被告自らが行った犯罪を何の根拠も示さずに「刑法上談合に該当するものが存在するとの報告は受けておりません。」などと人ごとのような表現で否定しただけものであり、とうてい一般株主の納得を得られるものではあり得ない。
「関係当局から捜査など、一切ございません。」などと、恰かも被告会社が事件とは無関係であったかのような言い方であるが、現実には関与した被告の企業活動を行った社員がこれに関連して有罪判決を受けているのであって、誰の目にも一見して全く欺瞞的な説明だと言わねばならない。

(4) 本件において、証人としての採用を申請している上田恵弘株主はこの説明に納得がいかず、さらなる答弁を求める質問を行った。それに対する議長篠塚勝正の答弁は以下のとおりであった。

 それから湯布院に対しまして・・・・・との、間違った回答ではないかというご指摘でございましたが、先ほど専務の田中からご報告させていただいたとおりでございます。以上ご回答申し上げました。

(5) 果たして、このようなまるで木で鼻を括ったような回答が、株主
   の質問に対して誠意を以て回答していると言えるであろうか。恰かも会社の持ち主は、株主ではなく社長であると言わんばかりである。
    当然に、上田株主は、何も説明を加えなかった議長の答弁に納得がいかず、さらに質問を行おうとした。しかし、議長はそれを許さず、別の株主の発言を許した為、上田株主は納得できる答弁を得られなかった。

(6) ところで、上田株主が被告を提訴した裁判で、両者は御庁の斡旋のもとに、以下の内容で和解した。

@ 原告は,被告に対し,被告の株主総会において,株主としての権利を,商法等の法令の規定に従って誠実に行使することを確約する。

A 被告は,原告に対し,被告の株主総会において,原告が,被告の株主としての権利を商法等の法令の規定に従って行使するときは,誠実にそれに対応することを確約する。

B 株主総会の議長が総会の秩序を乱す株主に対し退場を命じる  (商法237条の4第3項)際は、今後とも慎重に判断する。

(7) 上記のとおり被告が、株主として到底納得できない答弁を行い、上田株主のそれに対する質問を拒絶するなどは、「株主としての権利の行使に誠実に対応する」とは、到底言い難いのである。

(8) このような被告の対応は、裁判所による和解の内容を踏みにじったものであり、裁判所による和解を無視軽視しているものである。

3 原告の質問、及び強制排除

(1) 原告は、被告が発言時間を3分に制限したので、やむなく、毎年行っている被告職場の差別の具体例を示すことを、敢えて省略し、談合事件について質問を行おうとした。
    原告は、談合がすでに湯布院町の監査委員会によってその事実が確認されていることを示すために、本談合に関する湯布院町監査委員会の監査結果(甲第40号証)を読み上げた。

(2) ところが議長は、原告の発言が3分を超えたことを理由に執拗に「質問を止めろ」と言う発言を繰返し 原告の発言を妨害した。(超過した時間はわずか2分である)
    そもそも、談合の有無を確認するという質問は、総会の「目的事項」であることは間違いないばかりでなく、企業の存亡にかかわる重大な議題であり、この総会の他のすべての議題に優先されるべきものである。
    にもかかわらずそれを、わずか3分の制限時間を過ぎたという理由で発言を止めさせるなどということは、被告会社自身が当裁判所に於いて確認し誓約したところの
     「株主としての権利の行使に誠実に対応する」
   こととは、全く反することは間違いがない。

(3) のみならず議長は、警備員に対して「原告のマイクを取上げるよう」に命じた。そこで、警備員が原告のマイクを取上げようとしたので、原告は着席した。

(4) 原告は、鎖骨を骨折して治療中であったので、被告に対しては、「原告に物理的強制力を行使することは危険であるから控えるよう」また、三田警察署に対しては、「物理的強制力を行使しないよう被告を指導すること」を求める旨、予め文書で通達しておいた。
    しかるに被告会社は原告のそのような状況には一切頓着せず、例年と全く同様に直接的物理力を行使してきたので、原告は警備員との間での物理的接触を避け、負傷中の身体を自衛すべく、着席したのである。

(6) ところが、これを見た議長は「田中さんは着席されましたので、質問は特にございませんので。」などと一方的に言い、談合に関する答弁を回避しようとした。

(7) 原告は「湯布院町監査委員会が談合の事実を認めたことをどう説明するのか。」と追求したが、議長は「既に一括回答で答えた。」などと述べたのみで、原告に対して「マイクを返せ、着席しろ。」と繰返すのみで、談合問題について説明し、会社としての姿勢を具体的に示すという態度を、一切示さなかった。

(8) さらに議長は、原告の発言中であるにもかかわらず、「ビデオ撮影をやめろ。」という発言を繰返し、甲号証の撮影者の一人である菅野丈夫株主に退場を命じた。

(9) 警備員が菅野株主の周りに集まったときには、すでに管野株主は撮影を止め、カメラを鞄にしまっていた。しかし、警備員等は管野氏に対する強制排除を止めなかった。

(10) 被告がビデオを含む記録を公開しないので、原告等は暴力事件をでっち上げられないために、すなわち、自衛のために記録を残さざるを得ないという、原告等がビデオ撮影をする理由はすでに原告の書面でも述べたので、被告は承知していたはずである。

(11) 実際の議事には何ら支障になっていない撮影を、原告が「談合」という被告の犯罪を指摘している最中に、殊更に妨害し、物理的強制力で排除したことは、議長が意図的に会場を混乱させ、この混乱によって原告の指摘、追求をうやむやのうちに回避しようとしたとしか考えられない。
(12) 原告は、管野氏に対する排除に抗議し、これを阻止しようとした。しかし被告は、その排除を止めなかったばかりか、原告までも多数の警備員が体を持ち上げて運び出すという極めて乱暴な方法で退場させたのである。

4 甲第39号証ビデオテープの説明

(1)このビデオテープは松原明株主、菅野丈夫株主によって撮影されたものを接続したものである。ビデオカメラのマイクで記録された音声は、それぞれの撮影を止めさせようとする警備員や、それに抗議する株主の声が大きすぎて原告が発言した内容が聞き取りづらい。
  そこで原告がICレコーダーで録音した音声を映像と、重ねた。
   ICレコーダーの録音は連続しているので、それに重ねた映像も時間的にとぎれなく連続したものになっている。

(2)原告が身につけたICレコーダーによって録音したので、原告の声は大きく記録されている。従ってその他の音声、例えば議長の発言などは相対的に小さく記録されている。言い換えれば、マイクでしゃべる議長の声は、このビデオの元の音声がそうであるように、他の人には実際には、はるかに大きく聞こえている。

5 本テープにより立証されること。

(1)原告が発言を始めてまもなく議長は「前を向いて発言をしろ」として発言を遮った。この指示が不当であることは原告準備書面(5)第1で述べたとおりである。議長は原告の主張を知りながら、意図的に原告の発言を妨害しているのである。

(2)しばらくして、議長は「ビデオ撮影をおやめ下さい」と繰り返し始める。本テープではそれほど大きな音ではないように聞こえるが、実際には原告が発言を続けることに差し支える大きさである。原告が被告の談合を指摘し始めると、このような妨害をしたのである。原告はこれに抗議せざるを得なかったのである。

(3)原告の発言が3分を過ぎたとして、議長は発言を止めるように求め始める。この発言時間の中には、上記(1)(2)に対する抗議の時間も含まれている。

(4)議長は原告の贈賄事件についての具体的回答をしないまま管野株主の排除を命じる。

(5)警備員が管野株主(ニットのキャップをかぶった人物が管野株主である)の周りに集まった時には管野株主は撮影を止め、カメラを鞄にしまっていたのに、議長は執拗に排除を命じ、意図的に会場を混乱させたのである。

(6)他にもビデオ撮影を続けている株主がいることには構わず、執拗に管野株主を排除させたことは、管野株主が排除される映像が存在することで明らかである。

(7)すなわち、議長の目的は撮影を止めさせることではなく、排除させることによって、当然それに対する抗議があると予想し、混乱を予測してのことであったのである。

(8)原告は議長の度重なる暴力教唆に対し、「正当防衛の実力行使をするぞ」と警告した。しかし議長は原告に対しても退場を命じ、大柄な女性警備員まで使って原告を持ち上げ、運び出すという異常な方法で、排除したのである。

第2 被告の甲35号証・36号証に対する、原告の主張。
 
(1) 被告はその「第4準備書面」において、原告がこれらビデオ映像をインターネットに掲載することを意識し、大袈裟に騒ぎ立てた如くに主張する。
これは、客観的事実にも反する、全く根拠のない誹謗である。

(2) すなわち、原告がインターネットにビデオを掲載することが可能になったのは、2005年5月、インターネットで原告を知り、その活動に関心を持ったオーストラリア人ジャーナリストが、原告のために大容量のデーター用メモリーをインターネット上に確保してくれたからである。
    それまでは原告は、ビデオを掲載することが可能とは考えていなかったのである。実際、掲載を始めたのはそれ以降である、被告の主張には理由がない。

(3) また「大袈裟に騒ぎ立てた」というのは、全く事実に反する悪意ある言い方である。不当な暴力的排除について株主が、自身の株主権行使を妨害させないために抗議するのは当然のことである。むしろ、このような事態の原因を作っているのは、警備員が株主を担ぎ上げて運び出すなどという、異常な方法をとっている被告であることは言うまでもない。

(4)尚、原告はホームページに原告の写真はもちろん、住所、電話番号を掲示している。すなわち、原告の全人格をかけて、社会に対しホームページによる訴えを行っているのである。原告のホームページのアクセス数はメインページだけで10万件を超えている。特にビデオを掲載した5月以降のアクセスだけで1万5000件を超えている。原告のホームページ上の行為が反社会的なものであるならば、非難が原告の自宅にまで殺到するであろう。しかし、激励のメールはあっても非難のメールは一度もないことを付言する。(この後被告の関係者がそれをするかもしれないが)

第3 証人篠塚勝正について

 被告は「証すべき事実及び尋問事項の何れも,証人尋問に適さない」などと主張している。
 しかし、議長であり被告社長であり、何よりも本件物理的強制力で原告を排除したことを命じた(暴力教唆の常習犯である)張本人である。本証人以上に被告側証人として適した者がいるはずがない。
 篠塚以外の証人からは、外形的な事象以外、本件の核心については推測の証言しか得られない。
 万が一にも、篠塚を採用せず、これら警備員を採用するなどといった本末転倒の訴訟指揮がなされてはならない。

第4 2005年総会と本裁判との関係

(1) 被告は或いは、2005年総会と本件2002年の総会とは関係がないと主張するかも知れない。

(2) しかし、これは全くの謬論である。これについては、冒頭に論じたところであるが、重要な問題であるので、念のためにここでも、やや視点を変えつつ論じておくこととする。
    すなわち、被告は「毎年同じ姿勢で株主総会に臨んでいる」と主張しているのであるから、2002年の総会も本総会での姿勢と同じであったということである。被告が都合の悪い質問をする株主を物理的強制力で排除するという理不尽な姿勢で、毎年の株主総会に臨んでいることを如実に現しているのである。

(3) また骨折している原告に対しても情け容赦のない行為を行う被告の姿勢が裏付けられたのである。

(4) 行政訴訟問題

 @  原告が質問した被告の談合については、大分地方裁判所において湯布院町住民が湯布院町に対して、被告沖電気の談合による損害賠償を請求するよう求める裁判を起こした。
     (平成17年(行ウ)第4号防災行政無線談合損害賠償等住民訴訟請求事件)
そして湯布院町は被告に対して、2005年6月30日付で「訴訟告知書」を送付した。
これについて被告は、訴訟参加の予定であるという。

 A  だとすれば、この行政裁判に於いて、被告はどのように自己の立場を説明するというのか。これは、社会的に非常に注目され、また、今後の被告会社のあり方をも決する重大な裁判である。
    たしかにこの告知は総会直後ということになるが、いずれにせよ、被告会社は「会社自体には捜査がなかったから関係ない」などと言っておれる状況ではなく、社会的に責任を問われ、その自己認識が注目される立場に置かれているのである。

 B  この訴訟に於いて、被告会社がどのような態度をとるのか・・・・、それは訴訟のあるなしにかかわりなく、それ以前の段階に於いて、被告会社として自主的自律的に、まず事実を正確に調査し、これに対する評価を行い、原因を究明し、今後決してこのようなことが再発することがないよう有効な対策を講ずることが必要であったはずものであるる。

C 株主総会は、そのような作業をなす上で絶好の機会であり、かつ
被告会社首脳部は、そのように行動すべき義務を法的に株主に対して負っているのである。なぜなら、会社の所有者は株主なのであるから。
むしろ、株主総会に於いてこそ、この問題について株主の衆智を結集して、沖電気としての問題解決のための対策を打出し、この大きな問題について沖電気が方向性を誤るということがないようにすべきであったのである。

(5) 被告の姿勢は、商法・独禁法その他の法制度上からして、本来あるべきはずの方向とは、全くgyかうの方向を向いていると言わねばならない。

(6) なお、2005年度総会については、2004年の総会と併せて別訴提起を予定していることを付言しておく。

以上