平成15年(ワ)第2804号 損害賠償請求事件
原告 田中哲朗
被告 沖電気工業株式会社
東京地方裁判所八王子支部民事第3部1A係 御中
平成17年10月14日
被尊前訟代理人弁護士 内 藤 貞
同訴訟復代理人弁礫土 長 家 広
同
第1被告の反論(退場命令の正当性)
1 事実の経緯
議長による原告に対する退場命令の正当性を根拠づける事実経緯は・既に被告が提出している乙第11号証の録音反訳書面からも明らかである。
2 議長の退場命令等の正当性及び証拠方法
上記1の事実経緯からすれば,議長の原告に対する本件退場命令等が議長権限く商汲237条の4第3項)の正当な行使であることは明らかである。
また,以上の事実経緯については,上記1に列挙したとおり,録音反訳(11号証)により客観的に明らかであり,この点において篠塚証人を取り調る必要性は全くない。
3 商法237条の4第3項について
商法237条の4第3項は「議長は其の命に従わざる者其の他の総会の秩序を乱す者を退場せしむることを得」と規定している。
この規定は,総会の秩序を乱す者に対して最長が退場を命じることができることを規定しているだけでなく,さらに,議長の退場命令に従わない者に対しては,自力救済が認められる範囲内において実力を行使して退場させることができることを定めているのである。すなわち,「総会の秩序維持のために必要があるときは・・・議事の進行を妨害する株主の発言を禁止することなどはもとより,その指揮に従わない者その他総会の秩序を乱す者を退場せしめることもできる(商237ノ4V)。そのためには,自力救済が認められる範囲内において実力を行使し,また必要がある場合に警察力を借りることも許される。
・‥総会が混乱し,議場が喧噪をきわめて事実上総会に諮ることができない場合には,議長の判断によってこれらの措置をとることができる。」のである(大隅健一郎・今井宏「会社法論中春」〔第三版〕83乱稲葉威雄・坂巻俊雄編集(大谷禎男・鳥飼量和)「会社法務質疑応答集」2565頁他同旨。)。
このことは,同条項の明文が「退場を命ずることを得」ではなく「退場せしむることを得」と定めていることに端的に表れているのである。
すなわち,総会の秩序を乱し,退場命令を受けているにもかかわらず退場命令に従わない者を放置したままでは,株主総会を進行させることが出来るはずがない。また,このような者を退場させるために,常に裁判手続を経る必要があるとすれば,正常な総会運営を図ることは不可能である。退場命令に従わない者を退場させ,株主総会の議事を正常化させることは議長の義務なのである。
そして,このような条文の規定及び争いのない定説ともいうペき解釈を受けて,実務上も,「株主がこれに従い退場すれば問題ないが,退場しない場合にはさらに重ねて退場を催し,それでも応じない場合には,退場するまで必ず議事を一時的に中断して議長は事務局〈ガードマンなど)に命じて退場処置をとることになる。その場合の退場処置というのは・当骸対象株主に対し議長の命による退場を促し,動く気配がないときは身体を取り囲む・腕をとるなど必要最小限度に身体の自由を拘束して退場させることができる。しかし従業員や保安要員等による実力排除にはおのずから・限界があるから・会社が警備保障会社のガードマンを配置して必要に応じて議長権限行使のため警備員の手を借りることが望ましい。」く商事添務研究会編著H新訂第三版〕株主総会ハンドブック」538頁)という運用が一般化されているのである。
更に付言すれば,本件退場命令の行使は・株主総会運営を妨害する不法行為に対する,正当防衛または法令に基づく正当な業務行為にも該当するものである(「注釈民法」(19)337頁)。のみならず,適法に発せられた退場命令に従わない者は刑法上の不退去罪にも該当するものであり、退去を強制できることは当然のことなのである(新版「注釈会社法」(5)171頁)。
第2 原告の2005年9月15日付準備書面に対して
1 同準備書面第1項に対して
議長の議事進行行為に権限の濫用があった等の主張は,否認ないしは争う。
本準備書面第1の第1項および第2項記載のとおり(乙11号証),権限の濫用があったなどという主張は,明らかに失当である。
2 同準備書面第2項に対して
争う。
本準備書面第1の第3項記載のとおり商法法237粂の4第3項は,総会の秩序を乱す者に対して議長が退場を命じることができることを規定しているだけでなく,さらに,議長の退場命令に従わない者に対しては・自力救済が認められる範囲内において実力を行使して退場せることができることを定めているのである。
原告の主張は,独自の理論と言うはか無い。
3 同準備書面第3項に対して
否認ないしは争う。
被告の原告に対する退場命令の執行方法は,適性妥当な自力救済の範囲に止まっており,何ら過剰な点は無い。この点は,既に提出している関係各証拠および被告が申請している毛利部証人の供述からも明らかである。
また,原告は,本件株主総会の退場命令の執行により左肩の症状が悪化したかのような主張を行っているが,同人が提出している診断書(甲3号証)は,本件株主総会開催日以前のものであり,全く証拠価値が無いことは明らかである。
4 同準備書面第4項に対して
否認ないしは争う。
本準備書面第1の第1項記載の事実経緯からすれば,議長の原告に対する本件退場命令が議長の権限(商法237条の4第3項)の正当な行使であることは明らかである。そして,その事実経緯については,録音反訳書(乙11号証)により客観的に明らかであり,この点において篠塚証人を取り調べる必要性は全くない。
また,被告による退場命令の執行方法が,自力救済と認められる範囲内の実力行使に止まっていた点については,ビデオテープを写真化した写真報告書(乙10号証〉 により既に明らかである(あるいは,被告が申立をしているビデオテープの検証をすれば,さらに,この点が明らかとなる。)。
これに加えて,退場命令の執行行為の際に,原告の間近にいた毛利部証人の証言により更に明らかにすることができる。これに対し,議長であった訴外篠塚勝正は,退場処分の際、毛利部証人よりも原告から遠い位置におり,かつ,退場処分を命じた後,総会を混乱させる目的で意図的に騒いでいる原告のグループ株主の動向や,これにより一般の株主に危害が及ばないかどうかにも注意を払う必要があったため,原告に対する具体的な退場の執行を注視していた訳ではないことから,証人としての適性を明らかに欠いている。
以上