平成15年(ワ)第2805号
 原 告 田 中  哲 朗
被 告 東   京   都  

準   備   書   面  ( 原告4 )

2004年12月27日

東 京 地 方 裁 判 所
八  王  子  支  部
  民 事 第 四 部
御 中

原告訴訟代理人

    弁護士  大 口  昭 彦

第1 原告の質問の正当性

1,被告の主張

(1)被告は

@ 原告は目的事項に沿わない発言を繰り返した。
A 原告は執拗に採決を要求した。
B 原告は不規則発言を続けた。

と主張し、それを理由に

(2)沖電気が原告を物理的強制したことを

 「警備員による原告の退場措置は適法なものである」

と主張している。

(3)しかし、原告が行った質問は全て株主総会の目的事項であり、不規則発言は行っていない。

(4)従って沖電気の行った退場命令及び、物理的強制力をもって原告を排除したことは、商法によって定められた株主の質問権を犯す違法なものである。

(5)被告がこれを看過したばかりか「適法」と主張していることは、公平公正であるべき警察官の職務に著しく違反するものである。

第2 株主の質問について。

1, 沖電気社長篠塚は議長として

「質問は前を向いて行って下さい。演説ではございません」

 とたびたび発言している。また、沖電気は別訴において陳述書による陳述の形で

「田中株主の質問は,質問というよりは演説というようなものでして」
「田中株主は質問するのではなく演説するつもりですから」

 などと主張している。(乙15号証3頁)

2, このことから、沖電気は株主が株主総会において行う「質問」を、あたかも小中学校において生徒が教師に対して行う質問と同様、知識の無いものが知識のあるものに「分からないことを尋ねる」ごときもの、「教えを請う」ごときもののであるかのように誤解していると推測される。

   だからこそ「質問は議長の方を向いてのみ行うものだ」「質問は演説であってはならない」と考えていると推測される。

3, 被告も同様に誤解をしている、若しくは、意図的に同様の解釈をしていると思われるので、以下説明を行う。

4, 広辞苑には、質問は「疑問または理由を問いただすこと」と記されている。すなわち、「問いただす」のであり、「分からないことを尋ねる」ことではない。

5, 例えば、国会において、総理大臣の所信表明演説の後行われる代表質問等の「質問」は、総理大臣に「分からないことを尋ねる」のではなく所信表明の中の問題点を指摘し、「問いただし」それに対する自らの考えを他の国会議員や国民に示し、同意を求めることを目的としている。

6, 株主総会における株主の質問も、議長に対して「分からないことを尋ねる」のではなく、会社説明の問題点を指摘し、「問いただし」問題点に関する自らの考えを示し、会社役員に対してのみならず、他の株主に対し同意を求めることが当然行われるのである。

   株主に向かって自らの持つ考えや情報を示し、語りかけることは、株主総会の目的に沿ったことであり、従って「質問」は同時に「演説」でもあり得るのである。(ただし原告が「演説」を行ったと主張するものではない)

7, 株主は、会社から示された情報と他の株主からの質問によって示された情報に基づいて自らの意志を決定し、議決に参加するのである。

8, すなわち、商法に定められた株主総会における株主の質問権とは、「分からないことを尋ねる」権利ではなく、同意出来ないことについて会社を「問いただす」権利である。

10, そうでないのであれば、株主総会に株主、会社役員が一堂に会する必要はなく、「質問」のある株主は書面で問合わせ、会社も書面で回答すれば済むことであり、株主総会が開催される必要がないのである。

11,沖電気は、株主が商法にのっとって、会社を「問いただす」権利を有しているという認識がないため、あるいは意図的にそのような解釈をしている為に、不当にも答弁を安易に拒否してはばからないものと推測されるのである。このような沖電気の議事運営は本来の株主総会の意義を没却させようとするものであり、許されない。

12,従って、このような不当な議事運営を「適法」とする被告の主張は許されない。

第3 原告の行った質問

1,原告が排除された際の質問について

(1)原告が沖電気より物理的強制力により排除された際の質問は

 「株主総会集中日に総会を開かないことについて採決を取って欲しい。採決を取らないので有ればその理由を述べて欲しい。」

  という内容である。

(2) 原告はこの質問の前提として、株主総会を集中日に開くべきではないのでないかという質問を行った。

(3) 沖電気は、この質問が株主総会の「目的事項外」であると、別訴において主張しており、被告もその立場を支持している。

(4) しかし議長である社長篠塚は、上記質問が「目的事項外」であるとは一度も発言していない。そればかりか

 「株主総会集中日でないかというご指摘でございますが、ご案内の通り決算日以降ですね、皆様方に計算書類を作成して監査をいたしまして、そして招集通知を作成する、こういった手続が当然の事ながら必要なわけでございます。こういったことを勘案して本日を決めさせて頂いているのでございますので、決して集中日云々ということはございませんので、ご理解頂きたい。」

 という答弁を行ったのである。(甲第1号証 番号79)

(5) 社会通念上、株主総会開催日に関する質問が株主総会の目的事項であることを考慮するまでもなく、議長が答弁を行ったのであるから、この質問は本総会において「目的事項」として取り扱われたのである。

(6) この質問に対する沖電気の答弁は上記のごとく、意図的に集中日に開いているのではないという趣旨のものであった。

(7) 何十年にも亘って毎年「株主総会集中日」という1年に1日の特定の日と、沖電気の主張する理由で選んだ日が一致することなどあり得ないことであり、これは誰が聞いても虚偽と分かる答弁である。

(8) 被告は、当日が「株主総会集中日」であったことを警察官の一部が退場したことの理由にしている。従って、沖電気の回答が虚偽であることを認識したはずである。

(9) 原告は虚偽の答弁に納得することが出来ず、虚偽であるから納得が出来ないという発言を行い、他の株主の同意を得る為に採決を要求したのである。

(10) 会社の答弁に納得がいかない場合、他の株主に同意を求める為に採決を要求することは株主に認められた権利であり、これも質問である。

(11)従って


「株主総会集中日に総会を開かないことについて採決を取って欲しい。採決を取らないので有ればその理由を述べて欲しい。」

 という発言は、明らかに「目的事項」の質問である。

(12)被告は、この際、原告が繰り返し裁決を求めたことを「不規則発言を繰り返した」と主張する。

(13)しかし、会社は理由も告げずに裁決を拒否し続けたのであるから、繰り返し採決を求めることは正当な質問であることは疑いが無い。

(14)またこの質問は、多くの株主にとって共通の利益がある質問であることを忘れてはならない。言うまでもなく、「株主総会集中日」に株主総会が開催される事によって、複数の企業の株式を所有していながら、どれか一社の総会にしか出席出来ないと言う制限を取り除くことを目的としたものであるからである。

(15) 以上、沖電気の行為は商法に規定された株主の質問をする権利、会社が答弁を行う責任を無視する違法な行為であることは疑いがなく、これを「適法」とする主張は許されない。

2. 人権問題に関する質問

(1)原告は毎年、沖電気の株主総会において、今も続く沖電気の職場の差別、人権侵害の実例を指摘し、根拠を示し、それを改めるように求める質問を行っている。

(2)しかし、沖電気は「事実無根である」あるいは「目的事項ではない」として答弁を拒否し続けている。

(3)原告は本総会においても実例を示して沖電気の人権侵害を指摘した。(甲第1号証の2、番号10,16)

(4)被告はこの質問について「原告が目的事項に沿わない発言を繰り返し」と主張している。

(5)単に、「目的事項に沿わない発言」とのみ主張し、それが具体的には人権問題に関する質問であったことを意図的に主張しないことは、被告が、社会の法秩序、人権を守ることを自らの重大な職務と認識していないことの証左であると言わざるを得ない。

(6)職場において人権侵害が存在するかどうかはその企業にとって重大なことであり、社会通念上、株主総会の目的事項であることは疑いない。

(7)そればかりか、沖電気は本総会の6ヶ月前(2002年1月1日)に発行した「沖電気行動規範」において「基本的人権の尊重」として


「沖電気は企業活動のすべてにおいて、すべての人の基本的人権を尊重します。沖電気は、性別、年齢、国籍、人種、民族、信条、社会的身分、宗教、社会的身分の有無などによる差別や個人の尊厳を傷つける行為を行いません。」


 と謳っているのである。(甲第31号証p2)

  まさに、原告が指摘した「思想信条による差別」について、それを行わないと、沖電気として発行した正式文書に記載しているのである。

(8)その企業が発行した正式文書の内容が株主総会の目的事項であることは疑いがないのである。

第4,結語

1, 被告は、原告があたかも沖電気の株主総会を混乱させるために出席し、理由のない発言を行うことで混乱させたかのような主張をし、沖電気が原告を物理的強制力で排除したこと、ひいては、被告がそれを看過したことを正当化しようとしている。

2, しかし、以上証明したように、原告の発言は、社会通念上、株主としての正当な質問であっただけではなく、法的、手続き的にも、株主総会の目的事項であった。

3, 沖電気が原告の正当な質問に答弁を拒絶したま物理的強制力で排除したことは違法な行為であり、これを看過したのみならず「適法」と主著する被告の主張は許されるものではない。

4, 全ての国民に公正公平であるべき被告が、このような、沖電気に著しく偏った姿勢、及び主張を行うことは、沖電気から被告に対し何らかの利益供与があったのではないかと、国民に疑いを抱かせる十分なものと言わざるを得ない。

         以上