平成15年(ワ)第2805号
 原 告 田 中  哲 朗
被 告 東   京   都  

準   備   書   面  ( 原告5 )

2005年3月11日

東 京 地 方 裁 判 所
八  王  子  支  部
  民 事 第 四 部
御 中

原告訴訟代理人

    弁護士  大 口  昭 彦

第1 被告証人、武田警部補の証言

1,証人の証言で以下のことが明らかになった。

(1) 警察が株主総会に臨む目的は会社側の議事運営を容易にするためだけの目的であり、株主の権利を無視した不公平極まりないものである。

(2)証人の以下の証言がこの事実を証明している

@ 株主総会において警察官がどういう場合に警察措置をとるかを定めたマニュアルや文書のようなものは存在しない。(証人尋問調書20p4行目〜12行目)

A 総会に臨席する警察官は商法、株主の法的権利についての教育を受けていない。(同21p8行目)

B 警察は議長が退場命令を出した場合には,その経過いかんにかかわらず,それは有効であると判断する。(同21p25行目〜22p7行目)

(3) すなわち警察官は商法に規定された株主の法的権利を認識すらせずに総会に臨席し、本件のごとく、議長が不当な議事運営を行い、それに抗議する株主を退場させる命令を出した場合でさえそれを擁護するという、不公平極まりない姿勢で臨んでいるのである。

(4) また、警察官は私服で臨席し、腕章をするなどして、警察官であることを株主に示していない。この件に関し証人は

@ 警察官が私服で臨席することは規則で決まっていることではない。(同24p21行)
A 会社側はだれが警察官か分かっている。
(同23行))
B 株主に誰が警察官か名乗るように言われても名乗らない。
(同25p1行)
C 名乗らないことに理由はない。
(同5行)
D それを不公平とは思わない。
(同9行)     

と証言している

(5)これは、警察に、企業と株主に対して公平であろうとする姿勢が欠落していることを証明している。これが被告警察の言う「公平公正」であるとすれば国民の意識とあまりにもかけ離れていると言わざるを得ない。

2,また以下に示すように被告の主張は原告に悪意を持ち、事実をねじ曲げたものであることも証明された。

(1)総会冒頭の状況について
    後にも述べるが、被告は「開会直前、原告と原告に同調する者以下「同調者という。)が、議長に対して、 沖電気に差別問題があるなどと一方的に捲し立てたことから、定刻に開会されなかった。」
     などと主張していた。「差別問題があるなどと」「一方的に」「捲し立てた」などとは、悪意をもった表現と言わざるを得ない。しかし、これは事実無根のことであり、実際には「議事運営に暴力を用いるべきではない」という当然の提案を穏やかに行ったのであり、これは甲19号証によって証明された。被告は証拠を突きつけられ、この主張を理由も述べずに「議事運営の質問だった」と改めざるを得なかったのである。

(2)原告の支援者について
  被告は総会で原告の支援者が「原告と同調者が、勝手に発言をしたり、野次を飛ばすなどし始めた」
  などと、あたかも原告の支援者が総会を混乱させているかのような主張している。
   しかし、証人も証言するように「勝手に発言をしたり、野次を飛ばした」ものが原告の支援者である根拠は全く存在しないのである。
 沖電気の株主総会には原告の他にも会社に批判的な立場の株主が毎年出席している。また、一般の株主であっても、不当な議事運営を目の当たりにすれば抗議したくなるのは当然である。

3, 証人の以下の証言は信用できないものであり、法廷で宣誓した上で虚偽をのべるなどとは警察官としてあるまじき行為である。警察官が法廷で宣誓した上で嘘の証言を行い、それを裁判所が看過するならば、その国はもはや法治国家と呼ぶには能わないと言わざるを得ない。

(1)証人は原告の質問が株主総会を集中日に開くべきではないという内容であったと証言していながら、議長の回答が総会の集中日になるのは偶然であり意図的ではない旨の答弁を行ったことを記憶していないと証言した。

(2) 証人は総会冒頭に於ける原告が行った発言の内容まで記憶していた。原告はこの際マイクを使用していない。これに比べ議長の答弁は全てマイクを使って行われており、会場の隅々まで明瞭に聞こえていたのである。

(3) この答弁部分は甲第1号証の1,2の該当部分によって極めて明瞭であることが分かる。

(4)警察官である事からしても、人が嘘をついたかどうかについては敏感であるはずである。原告の質問の内容を記憶していながら、それに対して議長が嘘の答弁を行ったことを記憶しないと言うことはとうてい考えられないのである。

(5)証人が嘘をついていることは明確である。

(6)証人は株主総会において会社が「与党株主」を準備する事実も、その噂すらも聞いたことがないと証言した。

(7)証人は40年間も警察官として警察に在籍し、複数回に亘って株主総会に出席している。
   企業が株主総会に「与党株主」を準備することは一般常識として知られていることであり、多くの書籍の中でも公表されている。(例えば、株主総会想定問答集 商事法務 平成16年版 74p 「従業員株主の出席」)
   この事実を、40年間警察に在籍し、株主総会に職務として複数回臨席した警察官が知らなかったり、「うわさも聞いたことがない」などとは、とうてい信用できない証言である。

(8)また、株主総会を「集中日」の午後から始める会社もあるかも知れないなどという証言も同様に警察官としての常識から逸脱した証言である。

(9)これらは、「総会屋」を株主総会から排除する為に行われた商法の改正以降、総会屋の影響は殆ど無くなったにもかかわらず、一般株主を総会参加にさせたくないがために行われている、不公正な企業の総会の運営の方法として、「与党株主」大量に動員し、多数の企業が同日同時刻に総会を開いている現実を知りながら、これら企業にとってマイナスのイメージを与える証言は嘘をついてでもしたく無いという証人の姿勢が現れており、これはまさに被告の企業に偏った姿勢を示しているのである。

第2 被告主張の矛盾

1,被告は総会の冒頭の状況について

(1)被告は準備書面では
 「開会直前、原告と原告に同調する者以下「同調者という。)が、議長に対して、 沖電気に差別問題があるなどと一方的に捲し立てたことから、定刻に開会されなかった。」 などと主張していた。

(2)ところが、証人の陳述書及び証言では「議事運営についてだった」と理由も述べずにその主張を変えた。

(3)被告は原告から該当部分の録音反訳が出されたため、主張を変えざるを得なかったのである。

(4)証人は記録をとっていたのであるから、(同25p22行)警察官という立場から「暴力を振るうな」という内容を「差別問題があると捲し立てた」などと「記憶違い」をすることなどあり得ないのである。

(5) すなわち被告は、原告行為に悪い印象を与える目的で証拠を突きつけられ、訂正せざるを得なくなるまで悪意を持った嘘の主張をしているのである。

2,株主総会に於ける企業に対する「警察措置」について。

(1) 証人は主尋問では株主総会において会社側を取り締まったことがあるかのような証言を行った。

(2) ところが、反対尋問での追求には、内容は全く知らないと答えた。 被告は何の根拠もなく、「警察は企業を取り締まったこともあるのだから企業に偏っているのではない」と主張したかったものと思われる。しかし、実際には、そのような例は存在しないのである。

3,警察官の「転進」について。

(1)被告は新山警部補が報告を受けたとする2名の警察官がいつの時点で他の会社に「転進」したのか主張を曖昧なまま放置している。

(2)原告は証人尋問の際、被告にその確認を求めたが裁判官から制止された。

(3)「転進」が総会の始まる前であったとすれば、新山は総会にまったく臨席してもいない者から報告を受けたことになり、当然彼らから、別の警察官が総会に残ったことを聞いたはずである。また総会が始まった後で「転進」したのであれば、総会冒頭において原告のまわりに警備員が集まり、強制排除寸前の緊迫した状況を目撃しており、「何も起きそうになかったなので転進した」などと報告するはずはないのである。

(4)この事実は新山警部補の「嘘」が「早合点」であり得るのか、意図的な嘘であるかを検証するに必要な事実である。

(5)新山警部補の、警察官が事件を目撃していながら目撃しなかった(事件現場に存在しなかった)という嘘が軽視されるならば、警察官が事件を目撃していないのに目撃したという嘘さえも招きかねない。これは警察による冤罪を生みかねない極めて重大なものである。

第3 原告に対する物理的拘束力による排除。

1,既に準備書面(原告1)で述べたごとく、警備員による強制排除は極めて暴力的なものであった。

(1)甲第35号証はその状況を収録したビデオテープである。

(2)被告は、警備員が極めて穏やかに原告を「誘導」したなどと主張しているが、事実は全く暴力的であり、原告を拘束し「引きずり出し」ていることがこの証拠により明確に分かる。

(3)証人は警備員が原告を「もっぱら説得」していたと主張しているが、まったくの事実無根であり、「診断書」を示して、これを議長に見せ、暴力を止めるように訴え続けているのに、問答無用とばかりに力ずくで原告を引きずり出したのである。

(4) その事実はこのビデオテープによって明らかであるが、さらに甲第1号証の1,及び2の該当部分によってさらに裏付けられる。これには原告の声の他、支援者の声も存在する。もし警備員が言語によって「説得」したのであればその音声が収録されているはずであるが全く存在しないのである。

(5)そもそも暴力排除が始まって原告が会場から出されるまでの時間は50秒ほどであり、わずか50秒の間に「説得」を行ったなどあり得ないのである。

(6)このビデオに見られる、原告に対する警備員の行為と同じ行為を、株主が議長や会社側の誰かにしたとしても、警察はこれを看過するというのであろうか。暴行の現行犯として逮捕するとしか考えられない。同じ行為を、行うものが誰かによって区別するのであれば、それを公平とは言わないのである。

(7) 議長の議事運営権は憲法に規定された法の下での平等を超えるものではあり得ないのである。

(8) 別訴被告沖電気は総会の冒頭から最後まで連続してビデオ収録を行っているので、このビデオが提出されれば本件排除に至る経過がより正確に分かる。しかし別訴においても沖電気は提出を拒絶している。本ビデオテープは記録の連続性においては完全なものではないが、原告が排除される部分については立証している。原告はビデオをダビングする機材も技術も有していなかったが、このたびそれらを習得するに至り、本書証を提出した。

第4,警察の株主総会に対する関わり

1, 本件は警察官の個人的な不手際に因って生じた問題ではなく、以下に示す事実は警察が組織として企業に偏った姿勢を取っていることによって起きたとしか考えられないのである。

(1)新山係長が「事件現場に警察官はいなかった」と嘘で言い逃れをしようとした。

(2)警察署長に提出したこの嘘を指摘した申入書が無視され続けた。

(3)公安委員会はこの嘘を妥当な説明とした。

(4)公安委員会に申立をした後も、謝罪はおろか、事実関係の訂正すらなかった。

(5)本件提訴に及んでも被告は原告に悪意を持ち。企業に味方する主張を続けている。

(6)被告証人の証言もこの被告の姿勢を裏付けるものであった。

2, マスコミの報道によると警察には「警視庁管内特殊暴力防止対策連合会」という組織が存在する。この組織は、

@  株主総会に於ける総会屋の違法行為から企業を守るために設立された。

A しかし、1982年の商法改正後、総会屋の総会への介入、暴力事件などは殆ど存在しないのが実状である。

B にもかかわらず、「株主総会集中日」には大量の警察官が「警視庁管内特殊暴力防止対策連合会」加盟企業の株主総会に「臨席」している。

C これら企業から警察には毎年10億円を超える会費が支払われている。

D また、これらの加盟企業からは警察に日常的に「接待」や「付け届け」が行われているという指摘がある。

E さらに、退職した警察官がそれら企業に就職する「天下り」の存在が指摘されている。

F すなわち警察は株主総会の警備を理由に企業から利益供与を受けている。

G これは企業がいわゆる「シャンシャン総会」を成功させることに警察が協力している報酬として支払われている。

(追って、新聞記事などを証拠資料として提出する)

3,本来株主総会は会社経営者と株主による会議の場であり、株主でもない警察官が「警察措置」を取る必要もない会議に「臨席」する事自体が違法な事である。

4,本件においても、株主が暴力を振るったことなど全く発生していないのに、(暴力を行使するのはむしろ会社側なのに)警察官が臨席することは沖電気の「シャンシャン総会」を成功させることをその目的としているからである。

5,その様な警察が、企業の不祥事を株主総会で追及する原告に対し、悪意を持ち、組織ぐるみの嘘をつき、敵対していると理解する以外に、本件の事態は説明がつかないのである。

第5 裁判所の訴訟指揮に対する懸念。

1,原告は証人に、「警視庁管内特殊暴力防止対策連合会」等、警察が企業の株主総会に関わる機構について質問しようとしたが、裁判官は尋問を制止した。

2, その際、警察官が目撃した事実のみを問題にしているとの発言をした。しかし、この件は前述したように、警察の組織としての株主総会への関わり(腐敗と呼ぶに値する)を考慮せずに判断すべき事案ではない。

3, 証人は株主総会に関する直接の担当者では無かったにしても、40年に及ぶ警察への在籍からそれらの実状について知る機会が無かったとは考えられないのであり、質問はなされるべきであったのである。

4,万が一にも、裁判所は、この事件の背景にある警察機構としての腐敗の実状から目を背け、問題を個人の問題として、以下に予想されるような、事件を矮小化した判決を書いてはならないのである。

@ 原告が沖電気から受けた被害は些細なものであり警察が止める必要があるほどの暴力はなかった。
A したがって警察官がこれを黙認していたことは妥当である。
B  原告の申し入れに対して警察官が「事件現場に警察官がいなかった」と嘘をついたことは「早合点」であり、原告の抗議を無視し続けた警察の対応や、公安委員会が、嘘を「適切な説明」と述べたことも、損害賠償に値するような重要なことではない。



5、このような判決は、警察の組織として不公正な実態から意図的に目をそらしたものであり、警察が国民に公平な組織であるかどうか、その行為が公正なものであったを判断する責任を回避した、権力に阿るものと言わざるを得ないのであり、到底国民の理解は得られず、警察に対してのみならず、裁判所に対する不信を生じさせるものである。

6,すでに指摘したように、近年の警察の不祥事は、警察官個人の資質に因るものではなく、組織としての腐敗を現している。

7、警察官の中には、誇り高く、その職務を遂行しようとする人が多数存在すると信じる。正義感を持つこれら警察官が近年の警察の実状をどのように感じているか、察してあまりある。残念ながら近年の実態は、警察には自浄能力が欠落しているとしか考えられない。そのことは、社会的モラルを低下させ、犯罪を防止するどころか誘発させていると考えられる。警察が国民の信頼、権威を取り戻すためには、その実態を隠すのではなく、あらゆる事実を明らかにして、その体質を国民の批判に耐えうるものに変えるべく意識改革を図らねばならないのである。

8, 裁判所は、国民が国家権力の腐敗を指摘し、改めさせる訴訟を起こしたときには、その機会を使って、これら腐敗を改めさせなければならない。かりにも、近年指摘されているように、裁判官が自らの出世を目的として、権力に阿る判決を書き、国家権力の腐敗を助長するようなことがあってはならない。それは日本の将来に100年の禍根を残し、やがて国を滅ぼすのである。

以上