意 見 陳 述
2004年2月18日
東 京 地 方 裁 判 所
八 王 子 支 部 民事第三部
御 中
原 告 田 中 哲 朗
記
1 私は被告会社を不当に解雇されました。以来22年間、企業の人権侵害を指摘し、改めさせる運動を続けています。毎朝、被告会社の門前に立って、職場の人に対し、「差別やいじめのない職場を取り戻そうではないか。」という呼びかけを行い、一方では、全国を回って、企業内の人権侵害が社会に及ぼす影響についての講演を行っています。
このことは本件裁判の、直接の主旨ではありません。しかし被告会社は、私が被解雇者であり、裁判で敗訴したあとも会社を誹謗中傷し続けているけしからんやつであり、株主総会に徒党を組んで押しかけ言いがかりをつけているのだ、という主張を行い、本件裁判の論点をそらそうとするおそれがありますので、本件の背景として触れておきます。
2 1978年に行われた沖電気の指名解雇では、1350名が不当に解雇され、そのうち70名ほどが、解雇を不当として裁判を起こし、解雇撤回闘争を開始しました。
すると会社は、争議を支援するものに対し、仕事の取り上げ、賃金差別などを行い、職場ではいじめがし向けられました。
私は、組合役員選挙に立候補するなどして、この非人間的な労務政策を批判し続けたため、会社から、見せしめとしての配転攻撃がかけられ、1981年、それを拒否したという理由だけで解雇されました。
被告沖電気で起きた人権侵害の実態は、私の解雇撤回裁判の中で、4人の証人がそれぞれ自身の体験として証言し、さらに、多数の人から自身の体験を述べた陳述書が提出されました
。
それにも拘わらず、裁判所は、配転命令が合法であるからそれを拒否した私に対する 解雇は合法であるとの判断を示すのみで、証人の証言で明らかなこの事件の本質を見よ うとはしませんでした。
3 しかし、被告会社において、会社に批判的だとされる人に対する人権侵害が存在する事実は、1991年、本庄工場の真喜志晃さんに対する仕事差別裁判の中で、浦和地方裁判所熊谷支部が、差別が存在した事実を認め、「被告沖電気は真喜志さんらの仕事内容、待遇などを改める」という内容で和解した、ということからも明らかです。いうまでもなく、これは氷山の一角にしかすぎません。
最近では、昨年、被告会社が残業代を払わずにサービス残業をさせていたとして労働基準監督署から指導を受け、数千万円に及ぶ未払賃金を支払ったという事件も起きています。
4 企業の中の思想信条を理由とする差別、人権侵害は、その被害者が気の毒であることはもちろんですが、それ以上に更に、経済のみを優先し、人の心を踏みにじることに痛みを感じない人間を職場の中で作り出してしまう、すなわち、人間の精神を企業が荒廃させるところにあると思います。現今の青少年の非行犯罪の多発や、他方での、高齢者幼児虐待の深刻化の原因の一つが、企業のこのような姿勢だと考えます。
5 私は、今なお被告会社で続いている、人権侵害を改めさせる法的行動も、いずれ改めて、起こさなければならないかと考えております。しかし、本裁判は直接にこれを目的とするものではないことを明確にしたと思います。
6 私は株主総会に出席して、これらの好ましくない実態を改めるよう促す発言を行ってきました。「差別の存在する重苦しい雰囲気の職場では、技術者が独創的な発想をし、よい製品を開発することなど望めないから、改めるべきである。」という、労働争議を行う人間としてというより、会社の発展を願う株主としての立場に立った発言であります
7 また株主総会の議事運営が、あまりにも株主をないがしろにしたものであるために、その是正を求める発言を行ってきました。これも株主としての立場による発言であります。
8 しかし被告会社は、都合の悪いことを指摘されると、その質問に答えることを拒絶し、さらに追求されると、暴力で株主を排除することを始めました。
本件では、「株主総会集中日に総会を開くべきではない。」と思うから、そのことについての採決を求めていただけで、暴力排除を受けました。被告は、「毎年株主総会集中日にあたるのは意図したものではない、偶然である。」と、明らかな嘘の答弁を行い、採決さえも拒否し、あまつさえ、「怪我をしているから乱暴をしないでほしい。」と、医師の診断書を示している私を、暴力で排除したのです。
9 商法には、総会を混乱させるものを議長は退場させることが出来ると書かれています。しかしこれは正当な発言をしている株主を暴力で排除することまでも議長に認めているものでは無いはずです。また、何人も裁判を受けずに身体を拘束されないことは、憲法によって保障されています。商法は、警察でもない議長が暴力を行使することまでも認めてはいないはずです。
このようなことを認めれば、会社の不祥事を指摘するなど、会社にとって都合の悪い発言をする株主を会社はたたき出して良いということになってしまいます。すなわち株主総会というシステムが形骸化してしまいます。
吹@もし私がされたことを、誰かが議長にすれば、その場にいた警察官に間違いなく逮捕されたでしょう。それほどの扱いを、私は受けたのです。暴力による肉体的苦痛はもとより、精神的苦痛、屈辱感、総会出席者に対する社会的信用の失墜による痛手は計り知れないものがあり、本来なら暴力行為、傷害の刑事事件として扱われるべきものかも知れません。。
早@被告会社は論点をそらすために、私が解雇されたことによる経済的損失を取り返したくて闘争を継続し、株主総会の出席も、いいがかりをつけて何らかのものを会社から脅し取ろうする、あたかも総会屋のようなならずものであると言いつのるかもしれません。
秩@確かに私は被告会社に対して、私に対する解雇撤回を求めています。しかし、私が株主総会で「私の解雇を撤回しろ」と発言をしたことは、めったにありません。また解雇の撤回は、復職することで賃金を得ることを目的とするものではありません。私は現在、自分で十分な収入を得ており、本音を言うならば、むしろ、沖電気のような給料が安くて環境の悪いところに戻りたいとは思いません。
しかし、会社に、自らの行ったことの非を社会的に認めさせ謝罪させるには、金銭で解決するのではなく、あるいは言葉でごまかすのではなく、元の職場に戻させることが端的な方法だと思っているので、解雇撤回の要求をしています。
刀@私が金銭目的の行動をしているのではないことを、示すならば
@ 被告会社は私を解雇した際、退職金を渡そうとしました。私は解雇を不当と認めたので、これを受取ることを拒絶し、法務局に供託しました。賃金も退職金も安い沖電気ですが、12年間働いた退職金は何十万円かはあったはずです。それから22年、会社が引取らなかったのならすでに法務局に没収されているでしょう。
経済的利益、金銭が目的の行動ならそのような無駄なことはしません。
A 1987年、被告会社の指名解雇争議が和解するとき、争議団は私の事件の解決も会社に求めました。私は争議団から、会社は金銭解決なら応じると言っていると聞かされました。
争議団は12億3千万円、平均1700万円の解決金を受け取りました。私は、金銭解決では会社が非を認めたことにはならないと考え、これを断りました。
B 私は本件事件に関連して、警察と公安委員会を提訴しています。その裁判の意見陳述の中で、私が経験した警察官の対応例として、私が現金を拾得した時のことを述べました。
すなわち、私は1993年9月21日、50万円の現金と500万円の通帳を拾得し、すぐに、近くの八王子市めじろ台派出所に届けました。その結果、それらは落し主の手に戻りました。その時の拾得物預り書の写しは、今も手元にあります。会社が述べ立てるであろう私の人間像が、総会屋、ならずもののようなものであれば、このような行動はとらないのではないでしょうか。
普@幸い、私の運動は、多くの人の共感を得ています。北は北海道から南は沖縄まで、昨年のみで全国48回の講演に招かれました。労働運動や人権、平和運動をする人たちだけではなく、公立学校、教育委員会からも招かれ、また社会正義が希薄になったこと、社会正義のために行動を起こす人が少ないことに憂いを持つ、亀井静香前自民党政調会長のような、いわゆる保守的な政治家からも共感を得ています。
磨@市民が、国や企業の不正を正すために起こした裁判は、多くが市民側が敗訴していることは残念です。そのため、裁判所の姿勢が権威、権力に偏っているという認識が社会に広がりつつあります。私は、本件裁判のすべての書面をインターネットで掲示公開しています。
また英文の翻訳も掲示しており、すでに多くの人からのアクセスがあります。
浴@世界の人が納得する公正な審判をお願いしたいと思います。
以 上