平成16年(ヨ)第419号 
立入禁止仮処分命令申立事件


債権者 沖電気工業株式会社
債務者 田中哲朗

 

準備書面(債務者1)

2005年1月26日

東 京 地 方 裁 判 所
八  王  子  支  部
  民 事 第 四 部
御 中

       債務者 田中哲朗

第1 債務者の法的権利

1、財産権の取得時効

(1)債務者の当該地所への立入には財産権取得時効が成立している。

@ 債務者は「第2」において詳述するように1981年6月30日より当該地所への立入を開始し、現在まで続けている。

A 債権者はその事実を認識していながら2001年10月まで20年を超えてこれを放置してきた。

B 債権者が20年以上に亘って当該地所への立入を放置したと言うことは、立入による損害が無いか、無視できるほど軽微であることの証左である。

C 後に述べるように、1987以来、債務者は債権者の株主総会に毎年出席し、職場の人権侵害を改めることを求める質問を行ってきた。

@ 1999年の総会において、債務者はそれまでと同様に人権侵害の具体例の指摘を行いつつも、篠塚新社長の考え方を一定程度評価する発言を行い、新社長が債務者が指摘してきた諸問題を解決することを期待する旨の発言を行った。

A  社長篠塚は原告が指摘した、差別の存在や不当な議事運営が事実でないと思うなら、それを否定するであろうにもかかわらず、否定することなく

「是非貴重な御意見として承らせて頂きたいと思います。」「ご意見として参考にさせて頂きます。」 「 一部過分におほめを頂きましてありがたいと思っております。」と礼まで述べているのである。(乙8号証 6頁)

B 社長篠塚はすでに13年に亘り株主総会で、厳しく人権侵害を指摘する発言を続けていた債務者を十分に認識しており、債務者の当該地所への立入も認識していた。債権者は債務者の行動に直接苦情を言う機会さえ持ちながら、それを言わず、かえって礼まで述べたということは、債務者の行動により、全く損害を被っていないことの証左である。

D 債務者の当該地所への立入の形態はこの時点と全く変化していないのであり、それ以降に新たな損害が発生することはあり得ない。

(2)以上、民法163条により債務者の当該地所への立入には財産権取得時効が成立しているのである。

2,表現の自由と公共の福祉。

(1)日本国憲法の概念の機軸になるものは、基本的人権の保障と、公共の福祉であると考えられる。

(2)債務者の当該地所への立入による抗議行動はこの両者、とりわけ「公共の福祉」に密接な関係を持つものである。裁判所は、それぞれの事案が、個人(本件においては法人)の権利と「公共の福祉」が対立している場合には、その両者を勘案すべきであって、一方にだけ目を向けてはならない。

(3)「第4」で詳述する、債権者の職場で今も続く、深刻な人権侵害を指摘し、改めさせようとしている債務者の行動は「良心」に基づくものであり、これは憲法19条により保護されるべきものである。これを、債権者の土地の所有権のみを理由として規制するならば、その事により、債権者の人権侵害を放置、さらには助長し、被害を拡大し、「公共の福祉」に反するのである。

(4)従って「抗議」の内容、すなわち債務者が指摘する、債権者による違法行為、差別、人権侵害が事実かどうか、またその程度を検証することなく、これを無視した決定が出されてはならないのである。

(5)国民の表現の自由は憲法21条により保障されている。さらに、その「表現」が公共の福祉を目的としている場合にはとりわけ尊重されなければならない。

(6) 憲法 第二十九条【財産権の保障】は

1  私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

   と規定している。

  債務者の当該地所への立入は、債務者の個人的な利益の為に行われているものではなく、「第4」に詳述するように債権者の人権侵害、違法行為を改めさせ、さらには国内の他企業に於ける同様の違法行為を改めさせるという「公共の福祉」の為に行われているものである。

(7)債務者の座り込みは、何ら実質的な損害を債権者に与えていないばかりでなく、後に述べるように債権者の利益をも目的としているものである。当該地所への立入の目的が達成されれば債権者の利益になるのであるから、これは債権者にとって「正当な保障」にあたる。

(9)したがって、債務者の当該地所への立入には憲法29条が適用されるのである。

第2 債務者の当該地所への立入について。

(1)当該地所に関する経過

@ 1978年11月、債権者は、経営危機を理由に従業員の1割弱にあたる、1350名の人員整理を行い、「希望退職」に応じなかった約300名を指名解雇した。

A 解雇された者の内、70人余がこの解雇を不当として争議団を結成し提訴する一方、連日、就労を要求して「就労闘争」を行った。

B 企業の都合で一方的に労働者を解雇して良いのかという社会的な批判の中、全国からの多くの支援者(一時期は数百人を数えた)がこの就労闘争に参加した。

C 債権者は警備員だけではこの就労闘争に対応できず、連日、課長以上の職制を総動員してこれを阻止せざるを得なかった。

D しかし、これを突破して被解雇者が構内に入り、構内において抗議集会が開かれることすら度々あった。

E 1979年11月頃には就労闘争の最中、債権者総務課長が支援者に突き飛ばされて足首をひどくねんざしたとして、障害、また建造物侵入で被解雇者と支援者を債権者が刑事告訴することすら起きた。

F 全国各地からの支援者は当該地所にテントを張り、泊まり込むこともあった。

G このような状況の中で、債権者は、門扉を突破して被解雇者が構内に入ることの阻止に専念せざるを得ず、当該地所への立入には干渉する余裕を持っていなかった。(乙24号証写真5,6)(警備員は争議団の座り込みを当該地所から排除しようとはしていない。)

H この争議は、1987年3月 解決金12億3千万円、35名が職場復帰することで和解した。

I 債務者はこの争議を職場の中から支援し、債権者の労務管理を労働組合役員選挙に立候補するなどして批判する中で解雇された経過から、争議団は債務者の解雇事件をも解決することを債権者に要求したが債権者は金銭解決のみを示唆した為、債務者は「問題が解決したことにならない」としてこれを拒絶した。

(2)債務者の当該地所への立入

@ 債務者が当該地所に立入を開始したのは、債権者から解雇された翌日の1981年6月30日からである。

A この日は、指名解雇争議の、当該、支援者、弁護士などと、当該地所において抗議行動を行った。この際、債権者の警備員のみならず、総務課長。職制等が門の内側に集結していたが、彼らから「債権者の敷地であるから出て行け」と言われていない。(このときの写真を証拠として提出予定)

B それ以来、債務者は毎朝の抗議行動を当該地所内、乃至、債権者敷地と道路の境界付近で行って来た。しかし、債務者の抗議行動は、門扉を超えて構内に入ろうとはしない、穏やかなものであった。

C また、土日、祭日等、債権者の休業日には当該地所の、門扉の前で数分間の「祈り」による抗議行動を続けてきた。

D この「祈り」による抗議行動は当該地所の中でも構内に最も近い場所で23年以上に亘り休まず続けているが、現在に至るまで一度たりとも債権者から「債権者の敷地であるから出て行け」などと言われたことがない。

E ちなみに、債務者が仏教徒として行っているこの祈りの内容は債権者の職場での人権侵害やいじめが無くなること、債務者の解雇以降死亡した債権者の歴代の社長「三宅正男、橋本南海男。神宮司順」をはじめとする関係者の冥福である。

F 答弁書で述べたように、毎月29日の座り込みは1982年1月29日より続けている。(乙24号証 写真1,2,3,4)は1983年当時、座り込みが現在とほとんど同じ形態で平穏に行われていたことを証明している。

G ただし、このころ小学生に配布する風船(乙18号証)にはヘリウムガスを入れて配布していた。債権者の本件の主張が正しければ、空中に浮かんだ風船(乙24号証 写真4)は車両からの安全確認の妨げになっていたはずであるが、そのような指摘を受けたことはない。現在は風船が子どもの手を離れた際、それを子どもが追って道に飛び出す危険があるので、ガスを入れずに、また家に帰るまで膨らまして遊ばないことを約束させて渡している。。(甲第7号証P95,96)(甲第6号証2001年11月29日記載部分)

(2)債権者の当該地所に対する対応

@ 以上述べたように、債権者は、当時大きな社会問題となった指名解雇争議の中で、構内への立入を阻止することが精一杯で、当該地所に対する争議団及び支援者の立入に干渉する余裕が無かったと推測される。(乙24号証 写真5,6)

A この指名解雇争議の最中に起きた債務者の解雇争議、債務者の抗議行動は、門扉を超えて構内に入ろうとはしないなど、争議団の闘争に比べ穏やかなものであった為、債権者は、債務者の当該地所における

@ 毎朝の門前の行動 
A 毎月29日の座り込み 
B 土日祭日の「祈り」 

これらを放置、黙認する行動を続けたのである。

B 指名解雇争議が終結した後も、債務者の行動は全く同様に続けられたため、債権者はその対応を変化させず、1981年6月30日より2001年10月までの20年以上に亘って放置したのである。

(3)従って債務者が当該地所に立ち入ることを債権者が黙認している状況は23年以上続いており、債務者の財産権取得時効が発生しているのである。

(4)債権者が当該地所に鎖等を設置し、債務者の立入を禁止した原因は「答弁書」で述べたごとく、亀井静香という著名な国会議員が債務者の座り込みに参加し、それが報道されたことを嫌ったものであり、債務者の座り込みの損害によるものでは無いことは疑いない。 しかし、報道されたことにより損害を受けたと主張するのならばその抗議は報道したものになされるべきであることは言うまでもない。

第3 債務者の活動

1,債務者の活動の目的

(1)債務者は債権者から解雇されて以来、既に述べた債権者工場の門前による抗議行動の他にも以下に述べる活動を続けている。

(2)その目的は日本の企業内に存在する思想信条を理由とする差別に代表される人権侵害を改めさせることである。

(3)債権者は債務者が「誹謗中傷」を行っていると非難しているが、債権者だけを非難しているのではない事は、債務者のホームページは「企業ファシズム」を改めることを謳っており、具体的事実を指摘するのみで、そのどこにも債権者を罵る部分などが全く存在しないことでも明らかである。(甲第7号証)

(4)また債務者は根拠のある事実を指揮しているのであり、それら事実を改善することで、債権者の従業員の利益はもちろん、経営者としての債権者の利益にもなると信じているのである。

(5)債権者は、債務者の運動が自らの経済的利益の為に、債権者会社に復職する為のものであるかのごとく敢えて矮小化した主張を別訴においてしている。しかし、そのような目的で23年間に亘り毎日門前に立ち続けるなど説明が出来ないのである。

(6)(乙第10号証)は債務者が現金50万円と500万円の預金通帳を拾得しそれを直ちに最寄りの警察に届けたことを示す証拠である。債務者の人格の一端を示すものである。

2,講演活動

(1)債務者は債務者の債権者職場での経験を題材として作った歌を織り交ぜた講演活動を続けている。

(2)その目的は、企業の中での思想信条を理由とする差別の実状を社会に知らしめ、それが、単に一企業の問題として止まるものではなく、社会モラルの低下に影響していることを訴えることである。

(3)また、様々な社会問題を看過するのではなく、一人の人間、市民、国民としてそれに関心を持ち、それぞれが社会の将来に責任を持った行動を起こすことを呼びかけている。

(4)債務者に講演を依頼するものは、労働組合、平和、人権に関わる市民団体に止まらず、公立学校、教育委員会に及んでいる。またその地域も北は北海道から南は沖縄に及んでいる。
(乙第14,15,16号証)

3,債務者に関する報道

(1)債務者の活動はこれまで度々新聞、書籍、テレビなどマスコミに好意的に報道されてきた。
 
 これらを示す新聞記事、写真等の一部を証拠として示す。
乙12,13,14,号証)

(2)この他に債務者を好意的に取り上げた書籍の一部を以下に示す。

2001年10月 ダイヤモンド社 鎌田慧著 
 忘れてはいけないことがあるpTーV

2000年5月号講談社「現代」斎藤貴男著 
 「労働組合」よ。既得権捨て市場主義と闘えp191

1998年10月 海風書房 大原猛著 
「下町の神父」p256−257

1995年 11月9日号 ダイヤモンド社 野田正彰著「ミドルの転機」p134ー145

1995年6月 日本エディタースクール出版部 山口泉著 
 「テレビと闘う」p47−50

1994年 9月24日号 ダイヤモンド社 週間ダイヤモンド 野田正彰著 
「ミドルの履歴書」p80ー83 

1994年 4月 講談社 佐高信著 
 「人生のうた」p47−49

(3)これら報道や、債務者の講演により債務者の活動に共感した者が、これまで数知れず当該地所の座り込みに参加してきた。その多くが、社会の成り行きに責任を持った行動を目指す人々である。(甲7号証13頁から112頁)著名な国会議員である亀井静香氏もその一人であることを付言する。(乙12号証)

4,債権者株主総会への出席

(1)債務者は1987年以来、毎年、株主として債権者株主総会に出席し、職場の人権侵害の実例を指摘しつつそれを改めることを求める発言を行っている。

(2)債権者は債務者の株主総会への出席の目的が、債務者が復職する為だと別訴において主張しているが、債務者は自らの復職を求める発言など18年に及ぶ出席で一度も行った事がない。そのことは債務者の発言の記録である(乙第1の1号証)(乙第8号証)(乙第9号証 )(乙第19号証)のどこにもそのような発言がないことでも明らかである。

(3)債務者は技術者がのびのびと、その能力を発揮するためには、その職場から差別やいじめなどを無くすべきであるし、その方が債権者の利益に繋がると指摘する発言を常に行っている。(乙第1号証の1,3頁)(乙第9号証 2頁)(乙第8号証 2,3,頁)(乙第19号証の1、3頁)すなわち、株主として債権者の利益になる提案を行っているのである。

(4)しかし、債権者はその提案を真摯に受け止めることをせず、追求されると強権的な議事運営で総会を終了させることを繰り返してきた。これは債権者が「解雇された人間が、その企業の利益になることをするはずがない。」という偏狭な考えから抜け出せないでいることによると推測される。

(5)そして、2001年、2002年、2004年の総会には質問しているだけの債務者を物理的強制力で排除するという違法な行為に及んだ。

(6)株主が暴力を行使したり、暴力を背景に会社を威嚇したり、理不尽な言動で言いがかりを付け、株主総会を混乱させているような場合には、議長にはその株主を退場させる権限が存在している。しかし、自らの嘘の答弁を追求することを止めないという理由で株主を物理的に排除することまでもが許されるならば、商法によって定められた株主総会というシステムが形骸化してしまうのであり、違法なことである。

(7)債務者は2002年の総会に於ける排除を不当として別訴に及んだのである。

(8)債務者は、債権者の人権侵害を改めさせることは、その被害者を救済するだけではなく、債権者にとっても利益になると言う考えで、株主総会の行動のみならず、その運動を続けているのであるが、債権者はそれを受け入れることが出来ないでいるのである。

第4,債権者の違法行為、

1,思想信条による差別、人権侵害

(1)債権者は、1978年の指名解雇以降、上記争議団を支援する者、あるいは、争議団の配布するビラを受け取り続けているという理由で会社に抵抗している者と見なされた者、就業時間前のラジオ体操(就業時間前であるから債権者に法的拘束力はないので建前は自由参加)に参加しないと言う理由で会社に抵抗していると見なされた者に対して

@ 仕事の取り上げ。
A 賃金差別
B 昇進昇級のストップ
C 職場の親睦会などからの排除
D 口を利かせない、挨拶をしても返事をさせないなど職場での孤立化


 などの差別、いじめを行い、また、し向けた。

(2)これらの状況は現在も継続しており、以下に示す、法的な申立においても、債権者は一切その責任を認めず、反省の態度を示していない。従って、その被害は現在も継続して発生し続けている。

(3)近年、経済界でも、思想信条に対する差別が企業内に存在することの反社会性、反効率性を認識し、それを改める動きがあり、債権者もそれに乗じて2001年に発行した「沖電気行動規範(乙第20号証、2頁 2,4)において、「思想信条による差別をしない」と謳っているが、これまで行ってきたことの事実を一切認めず反省すらしていないのであるから、残念ながらそれが本心でないことは疑いがない。

(4) 債権者が行ってきた差別の実状は、債務者の地位保全裁判の中で計4人の証人、下出信夫、北野好人、新江隆、武原妙子により自らの経験として生々しく証言された。また別の5人の陳述者により陳述書により陳述された。(債権者がこれら、証言、陳述の事実を否定するならば、証言調書、陳述書を証拠として提出する)

(5)また、債務者の他にも債権者による差別に対し法的処置を講じた者が以下のように存在する。

@ 1981年 沖電気争議団代表中山森夫氏の妻洋子さん、沖電気争議を支援していた浅利さんが、仕事を取り上げられた事など差別を受けたことを理由に沖電気を東京都労働委員会に提訴した。

A 1991年 指名解雇争議の和解により職場に戻った真喜志晃(まきしあきら)さんが、仕事差別、いじめがあったとして浦和地方裁判所に仮処分の訴えを起こした。

B 1993年 指名解雇争議の和解により職場に戻った秦康博(はたやすひろ)さんがリフレッシュ休暇を与えられないなどの差別を受けたとして沖電気を東京地裁に提訴した。

C この3件の事実関係については、債権者は別訴に於ける「第2準備書面」の中で認めている。(乙第11号証 9頁 10頁)

(6)これらは、それぞれ被害者との和解などで解決し、債権者はそれらを理由にこれらの訴えが理由のないものと主張している。しかし、複数の者が債権者より人権侵害を受けたとして法的処置をこうじたという事実は揺るがないのである。とりわけAの件については浦和地方裁判所から、差別の事実を認定し、それを改めるようにとの決定が出されている。(乙第2号証の1)浦和地方裁判所はこの決定の中で債権者が真喜志さんに対し

   「社内QCサークルからの排除、納涼祭、運動会、新年会、親睦会からの排除等、一切の差別的取り扱いをしてはならない。」

と命じており、債権者が真喜志さんに対し、


@ 社内QCサークル
A 納涼祭、
B 運動会、
C 新年会、
D 親睦会

からの排除を行っていたと認めているのである。

また仕事の内容についても

 「他の従業員から隔離した状況で、債権者の経歴や能力を無視して、基盤図面に記載された電子部品の色塗りによる単純識別作業を強いていた。」


  
という「いじめ」が行われていることも認めている。

 この事件は1992年に和解した。この和解の審尋調書(乙第2号証の2)によると債権者は真喜志さんに対し

@ 適切な作業指導を行うこと(すなわち、これまでは不適切な作業指導が行われていた)
A 行事やQCサークルに本人が望めば参加させること(すなわち、これまでは参加させていなかった)
B 解決金50万円を支払うこと

  を命じられ、これに応じたのである。すなわち債権者が行った差別、いじめという人権侵害を行ったことを裁判所が認めたことによる命令に債権者は応じざるを得なかったのである。

(7)従業員がその雇用主である企業を相手取って法的救済を求める行動を起こすことが、どれほどリスクの高いものであるかは、心ある裁判官には敢えて説明するまでも無いことである。債務者の訴訟を含めると4件もの訴訟が債権者を相手になされたと言うことは、その陰に、被害者が法的処置を取り得無かった、遙かに多くの人権侵害が続いていることを裁判所は推測すべきである。

(8)債務者は、1987年より毎年、債権者株主総会に株主として出席し、上記した、すで起きた事実のみならず、現在起きている債権者職場の差別を具体的に指摘し、改めることを求めてきた。以下その例を示す。

@ 指名解雇争議の支援者及び和解による職場復帰者に対して賃金差別、仕事差別、昇進差別、親睦会、クラブ活動からの排除などの差別が行われている。 (ほぼ毎年指摘)

A  本庄工場において捺印作業をさせられている者が自動機械があるのに手作業をさせられている。さらに捺印後に「これは不良品だ」と言いがかりを付けてし直しさせている。
 (1987年に指摘)

B  職場復帰した秦康博さんが、リフレッシュ休暇を与えられなかったとして、被告を東京地方裁判所に提訴した。 (1993年に指摘)

C   弁理士の資格試験に合格した者(HKさん)が、その資格をより完全なものにする手続きとして必要な研修を出張扱いで受けさせてもらえるよう要求したが拒否された。  堀江さんは弁理士という重要な資格を持ちながら全く仕事が与えられていない。また彼の机の上には段ボールなどが物置のように他の者によって積み上げられている。(1996年に指摘、それ以降度々指摘)(乙第9号証 2頁)

D  指名解雇争議の支援を中心的に行った米田徳治(まいたとくじ)さんは債権者会社の優秀な技術者でありながら、差別を受け、2004年、定年退職するまで(40年以上勤続)係長にすら昇級しなかった。(2004年に指摘)(乙第19号証の1 3頁)

E 債権者プロセス技術の有賀(あるが)さんは未だに仕事が全く与えられていない。(2004年に指摘)(乙第19号証の1 3頁)

F 債権者の従業員であって日本共産党に所属していることをビラの配布等で公にしている者は(Dの米田さんもその一人)この25年以上に亘って、一人として係長にすら昇進していない。(度々指摘)(乙第19号証の1 3頁)

(9)債権者は、この指摘に対し、ただの一度も具体的な答弁や反論を行なったことがない。債権者は、債務者が指摘することが事実であるから反論できないのである。(乙第1号証の1)(乙第8号証)(乙第9号証)(乙第19号証の1)

(10)以上述べた債権者の思想信条による差別、人権侵害の実態が、過去のものでは無く、まさに現在も続いていることを、債権者が提出した証拠が証明している。

@ 債権者の警備員が記録した「田中正門終日闘争報告」(甲第6号証)2004年7月29日分に

「12:21 Hが立ち寄りすぐ帰る(共産党)」

  という記載が存在する。

A この「H」は上記(8)CのHKさんである。この日は午後の休暇を取得し、帰宅する途中に債務者の座り込みに立ち寄ったのである。

B 債務者は、債権者の職場の思想信条の分かりやすい実例として、日本共産党に属する債権者従業員に対する差別を債権者株主総会、また別訴の中でも実例を示して指摘してきた。

C しかし債権者はその差別の存在を否定するだけでなく「だれが共産党員か認識すらしていない」と主張してきた。(必要に応じ、録音の反訳を提出予定)

D 上記、甲第6号証における記載は、債権者警備員が、Hさんを「共産党に属するところのH」であるとして個人を特定しているのである。

E 債権者の従業員である日本共産党員は債権者門前近くでビラを配布することがあるが、Hさんはその様な行動に参加したことはない。

F にもかかわらず警備員がHさんを「共産党」と認識し、債権者への報告書にそれを記載したことは、警備員が債権者より「あの堀江は共産党である」と教えられていたことを物語っている。

G そして「共産党であるH」が債権者の監視の対象であったことを物語っている。

H「だれが共産党員か認識すらしていない」という債権者の主張が虚偽であることも明らかである。

I 企業がその支持政党によって個人を特定するなどと言う行為が違法であるばかりでなく、この事は債務者が指摘する債権者による日本共産党員に対する差別が事実であることを明確に裏付けているのである。

J 因みにHさんは債務者同様、共産党員ではない。しかし、債務者自身も、債権者会社でマンドリンクラブの部長をしているとき、「マンドリンクラブは共産党だ。田中は共産党だ。」と言われた経験がある。債権者は「会社に抵抗している」と見なしたものを「共産党」と識別しているのである。この事自体違法であることは疑いがない。

(11)債務者はHさんが弁理士の資格を持ちながら、20年以上に亘って全く仕事を与えられていない状態が続いていることを、債権者株主総会において指摘し、改善を求め続けてきた。債権者は多くの「被差別」の人に全く仕事を与えていない理由を「仕事をする能力がない」と主張してきたが、弁理士の資格を持つものが債権者のような技術系の企業にとって「能力がない」などとはあり得ないことであるので、債務者は分かりやすい実例として示したのである。

3、 湯布院贈賄事件と債権者の談合行為について。

(1) 債権者従業員は2003年11月、大分県湯布院町の無線放送施設設置工事の指名競争入札に関して町長に贈賄を行ったとして、大分県警察に逮捕された。

(2) 2004年3月24日 大分地方裁判所刑事部は本件 (平成15年(わ)第365号、第410号 ) について

@ 被告人有永及び中島は沖電気が前記工事を落札して、自己の営業成績を上げるため、被告人江藤に渡す金銭が賄賂として被告人吉村に渡されることを知りながら江藤に金銭を交付したものであり、江藤は沖電気に落札させることによって、自己の手数料を得ようとして、吉村に賄賂を供与したもので、いずれもその動機に酌むべき事情はない。
 として

A 債権者従業員 有永 弘 と 中島 繁 に対し 懲役1年2月 執行猶予3年の有罪判決が出され、この判決は確定された。

(3)この為、債権者沖電気は電気工事の営業につき、2004年6月24日から7月23日までの営業停止、その期間に処分に反する行為があると5年間の免許取り消しという非常に厳しい処分を監督官庁から受けた。 

(4)債務者は、大分検察庁より、2000頁に及ぶ、本贈賄事件被告、容疑者等に対する供述調書、及び関係書類を入手した。(全てを証拠として提出するにはあまりにも大部なのでその一部を提出する。)

(5)これによると、以下に示すように、債権者は公共事業の受注に関する「営業」と称して、いわゆる談合行為を少なくとも20年におよぶ長年に亘り同業他社と繰り返していたことが明らかである。

(6)例えば、債権者九州支社に於いて公共事業に対する営業を行っていた 大谷正義 は(乙22号証の1、 2頁下から3行)

 そもそも私共電機業界の営業活動と言いますのは、全てという訳ではありませんが、談合ありきの営業活動を行うのです。
この談合ありきといいますのは、落札業者となる為の条件づくり、つまりは注業者側の意向を取り付けるか、否かということになるのですが、私自身、沖電気工業の営業に携わり約20数年という経験がありますし、平成11年4月1日付けの人事異動で公共営業課の課長に就任しましてから、指名業者間で行われる談合の担当者にもなっています。指名業者間で談合が行われます理由というのは、指名された各業者が正規どおりの入札を実施すると、入札予定価格を超えれば落札できませんし、かといって予定価格を下回れば業者にとっては利益が減少するのは当然です。利益面を考えず、工事を受注することのみを考えれば、入札予定価格を大きく下回ろうが関係ありませんが、採算が取れないと分かった工事を受注する馬鹿な業者は決してありません。

 と債権者、電機業界で談合が日常的に行われていると供述している。

(7) また大谷の上司であり沖電気九州支社副社長 である 中島 繁 は (乙22号証の4 2頁)

 これについては悪いこととは分かっていますが、私たちの業界は談合をすることが多く、その設計図番が沖電気仕様となっているとすれば他の会社については、沖電気の営業努力を認め落札しようとはせず沖電気に落札を譲るのです。
全ての会社ではありませんが大手無線メーカーについては8社ありますが、そのうち6社については大体談合に応じてくれるのです。

   と、これも債権者が談合を行っていると供述している。

(8) さらに中島より格上の  本社 沖電気工業株式会社ネットワークシステムカンパニー公共システム事業センター統括マネージャ兼公共営業第2部長 である 有永 弘 は(乙22号証の3 37頁 )

しかし3000万円以上の全ての工事の入札価格の決定において判定会議が開催されている訳ではなく、例えばネゴ、つまり談合していて当社の支社がチャンピオンになっている場合には、支社の担当者等から私か竹内に「これで行きますから。」等と入札金額の連絡があることもありますし、その時には金額が原価割れしていないことを確認して承知するのです。もちろんこの反対もあり、チャンピオンになれずに譲る場合には、その旨の報告があります。そしてこれは希なことですが、予定価格を掴んでいる場合でも、その価格ちょうどで入札することはありません。それは落札して契約しても、擬下記の承認が必要な物件もあり、その時議会から疑われないないよう、予定価格よりは若干低めで入札しているのです。

と、これも、談合を行いながら、地方自治体議会の議会からその 事実を巧妙に隠蔽する方法についても供述している。 そして

日本無線株式会社九州支社、 株式会社日立国際電気九州支社 株式会社東芝九州支社、 富士通株式会社大分支店、 三菱電機株式会社九州支店、 と話をし、支社が受注する方向で話を進めており、まだ全て終わったわけではないものの、各社とも談合に応じ(同38頁)

とこの件に関して談合を行い

そしてその結果は「入札(見積)結果表」のとおり、九州支社が一回目に249,500,000円で入札し、落札していることも確認できます。(同39頁)(乙第23号証)

と談合により落札を成功させたことを自白しているのである。

(9)また株式会社日立国際電気 中原茂美 は本件湯布院町防災無線工事入札に関して、上記大谷から

『沖電気工業の大谷さんから電話があり、「入札についてどうするか」というようなことを聞かれ、「うちは、頑張るつもりはありません。」と答えたようにあり、その後大谷さんから「2億6000万以上でお願いします。」と応札価格を示されましたので、当時私としては諦めていたこともあり了承したように思います。それで、私が色を付けて部下の古賀洋一に「2億6800万で応札しろ。」と指示し、古賀を代理人として入札に行かせその金額で応札させたのです。』

と談合があった事実を明確に供述している。(乙22号証の2 2頁)

(10)大分県警察がこれら談合の事実を知りながら起訴していないのは不可解であり、近年指摘されている企業と警察との癒着さえ伺わせるものである。債務者は大分検察庁に問い合わせを行ったが納得のいく説明を得られなかった。そこで2004年9月、警視庁にこの談合を告発した。(乙21号証)また東京都公正取引委員会にも申告を行ったことを付言しておく。

(11)また2005年1月12日、 この談合により湯布院町が損害を受けたとして、湯布院町民が湯布院町に対し監査請求をしたことを付言する。以下は大分毎日新聞の記事である。

大分・湯布院町の汚職事件 「談合、町に損害」 住民が監査請求 /大分
 ◇00年度防災無線工事

 湯布院町民が12日、「00年度の防災無線工事発注を巡る談合で、町が損害を受けた」として、町に対し約4500万円の損害賠償の住民監査請求をした。監査請求したのは同町川上、無職、谷千鶴さん(49)ら3人。

 工事を巡っては、前町長と沖電気工業社員らが入札に指名する見返りに現金を授受した贈収賄の罪で、大分地裁で昨年3月に有罪判決を受けた。

 谷さんらは監査請求書で「供述調書などによると沖電気は他社と談合した」と主張。「入札改革に取り組む自治体の落札率は平均70〜80%といわれるが、本件の落札率は97・569%。そのことから計算すると、沖電気は4490万円の不当利得があり、佐藤哲紹町長は損害賠償を請求する義務がある」としている。【大島祥平】毎日新聞 2005年1月13日

3,株主総会に於ける債権者の違法行為

(1)債務者は債権者の株主総会に株主として出席して職場の人権侵害を指摘し、改めるように求める発言を行っていることは既に述べたとおりである。債権者は、それら指摘に対し、何ら具体的な答弁を行わないばかりか、株主の法的権利すら蔑ろにする違法な議事運営等の対応を続けている。

(2)債権者は、毎回大量の「与党株主」を動員し、会社に批判的な質問をする株主を野次で威嚇したり、議事打ち切り動議を「与党株主」に出させ、挙手の多数を持って総会を終了させてきた。

(3)債務者が株主総会の内容を確認するためにビデオ閲覧を求めたことに対し、理由にもならない理由で拒絶した。(乙第4、5号証)

(4)また、債務者が、他の株主に対し、株主総会の正常な運営の実現を呼びかけようと考え、株主名簿の閲覧を求めたのに対し、債権者は債務者が「議事を混乱させている」などとして、これを拒絶した。(乙第6,7号証)

(5)言うまでもなく、株主が株主名簿を閲覧する権利は商法によって定められたものであり、これを理由無く拒絶することは違法な行為である。

(6)債権者は2002年株主総会に於いて、債務者の質問に回答を拒絶し、回答を求め続けた債務者を、物理的強制力で排除した。(乙第1号証の1、2)

(7)このとき債務者は肩を負傷しており、整形外科に通院中であり、前年の総会にも債権者が暴力を行使したことから、医師の診断書を持参し、それを示して、暴力を行使しないように訴えたにもかかわらず債権者は暴力を行使し、債務者の負傷を悪化させたのである。(乙第3号証)(乙第1号証の1 9,10頁)

(8)また同株主総会に於いて債権者の職場の人権問題について質問を行っていた上田恵弘さんは、その答弁を拒否されたまま物理的強制力で排除され、その際、来ていた上着を破られた。 上田さんはこれを不当として、債権者を貴裁判所に提訴し、民事3部において係争中である。(平成15年(ワ)第2823号 損害賠償請求事件)

(9)債権者は2004年の株主総会においても債務者が債権者の贈賄事件について行った質問に対し答弁を拒絶し、納得出来ないとする債務者を物理的強制力で排除した。(乙19号証の1,2)

4,裁判に於ける嘘の主張

(1)債権者は、30年以上に亘って、いわゆる「株主総会集中日」に株主総会を開いていながら、それを指摘されると、「決算の関係などで日が決まるのであり、意図的ではない」旨の答弁を行っている。

(2)債権者はこのように、誰でもが嘘と分かる答弁を株主総会において平然と行うだけではなく、この主張を、裁判所においてさえ行っている。

(3)本裁判に於ける「交通安全」を理由とした申立も、容易に嘘と分かることである。

(4)裁判所において嘘の主張をすることが軽視され、嘘の主張をする側の主張を採用するようなことがあっては、裁判所の公平性が国民に疑われてもやむを得ないと言わざるをえないのである。

第5 結語

1,以上述べた様に債権者は

@ 職場において差別という人権侵害を続け
A 贈賄、談合という犯罪を犯し
B 株主総会や、さらには、裁判という厳正であるべき場においても嘘の主張を平然と行うという

  違法、反社会的な姿勢を取り続け、全く反省していない。

2,とりわけ @については現在も深刻な被害が発生し続けている。 
3,債務者の当該地所への立入は、これらを改めさせようとするものであり、すでに説明したように、これは、債権者に敵対しているのではなく、債権者の利益にもなるのである。

4,市民が、企業の不正や国家権力の不正を指摘し、正そうとすることは、その力においても経済的にも容易なことではない。

5,裁判所は、弱者の立場に立って社会正義を実現するという大きな役目を忘れてはならないのである。

以上