平成17年(モ)第440号
立入禁止仮処分命令申立事件
債権者 沖電気工業株式会社
債務者 田中哲朗
準備書面(債務者2) 2005年4月14日
東 京 地 方 裁 判 所 八 王 子 支 部 民 事 第 四 部 御 中
債務者 田中哲朗
第1 原決定の誤り
1、原決定の判断は以下のように誤りであるので取り消しを求める。
2,原決定の認定した事実。
(1)原決定は、債務者の当該地所への立入に関して以下の事実を認定した。
@ 債務者の抗議行動の目的は,債権者のみならず日本中の企業内における人権侵害の改善である。
A 債務者の主張する立ち入りのための財産権とは使用貸借類似の継続的給付を目的とする債権であり、立入権は,民法163条で取得時効の対象となる「財産権」といえる
B 債務者が,本件立入を行うに際し,当初の約20年間は,債権者から,積極的な拒絶はなかった。
(2)しかし、以下の認定は事実誤認、乃至判断の誤りである。
@ 債務者が,立入権の行使として行っていることを積極的に明示していたといった事情は認められない。
A 債務者は,本件土地に立ち入らなくても債権者に対する抗議行動を行うことは可能であって,債務者主張の諸事情が,債務者が債権者の所有権を侵害することを正当化するものとはいえない。
B 債権者の本件土地の所有権・占有権を侵害するもので,最近はその侵害の程度が大きくなってきている。
C 交通上危険かどうかを判断するまでもなく,本件申立てについて,保全の必要性が認められる。
D 債権者の談合行為告発への報復や債権者株主総会をめぐる債務者との訴訟の和解交渉を有利にする交換条件として本件申立てを利用することを考えていたとしても,本件申立てが,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとはいえない。
E 本件申立てには,被保全権利があることが認められるほか,保全の必要性も認めることができる。
(3)上記(2)@に関して。
@ 債務者は債権者の知らない間に目立たないところに侵入し居座り続けたのではない。
A 債務者は座り込みの際、座り込みの目的を明示した看板を設置し、スピーカーで、座り込みの目的を放送し、債権者の違法性を追求し続けていたのである。
B この行為は,「債権の行使として行われていると認めるに足りるだけの積極的な外観・客観的事情」「立入権の積極的行使」以外の何物でもないのである。
C 債権者がこの立入を好ましいと考えるはずはない。
D それでも20年間もの間、「積極的な拒絶」をし得なかった。
E その理由は債権者は、それまでの経過から当該地所への債務者の立入には理由があり、その権利を認めざるを得ないと考えていたからである。
E すなわち債権者は20年間、債務者の立ち入り権を積極的に認めていたことに他ならないのである。
(4) 上記(2)Aに関して。
@ 債務者が原決定に従うことにより、すでに続けてきた抗議行動の形態を後退させることになる。
A その結果、債務者が立証した債権者の続けている違法行為、とりわけ人権侵害は現状のまま放置されるばかりでなく、
B 原決定により債権者はこれら違法行為が裁判所によりなんら咎められなかったことにより、正当化されたと考え、これら違法行為を繰り返し、さらに悪化させる可能性が極めて高い。
C 債権者工場内では 就業時間に従業員が飛び降り自殺をするという痛ましい事件すら起きた。
D 債権者による深刻な人権侵害を放置し、結果としてそれを容認した原決定は、今後さらに被害を拡大させかねないものであり、裁判所は事態に責任を持たねばならない。
(5) 上記(2)Bに関して。
@ 原決定は「侵害」とは具体的にはどのような被害なのか明確にしてない。
A 実際には具体的な被害は全く発生していないのである。
B また、債務者が答弁書、準備書面において証明した如く、本件立入の形態は20年間殆ど変化していない。参加者の数も大きな変化はない。変わったことと言えば参加者にコーヒーを振る舞うようなった事ぐらいであり、その事により「侵害の程度」が大きくなろうはずがない。
C むしろ座り込みの時間は当初の10年間の10時間に比べ、半分になっている。
D 「最近はその侵害の程度が大きくなってきている」との本決定は全く根拠のない事実誤認である。
(6) 上記(2)Cに関して。
@ そもそも本件申立の理由が「交通安全上の危険」であったのである。
A 債務者の立証により、裁判官はこの理由が虚偽であると認めざるを得なかったので「判断するまでもなく」とせざるを得なかったのである。
B 裁判所が提訴を受け、その理由が正しいかどうかを判断しないで決定をするなどということが許されるはずがない。
C 裁判の場において嘘を付くことが軽視されるならば裁判制度の信頼性を損なうものと言わざるを得ない。
(7) 上記(2)Dに関して。
@ 裁判官は、「債権者が談合行為告発への報復や債権者株主総会をめぐる債務者との訴訟の和解交渉を有利にする交換条件として本件申立てを利用することを考えていた」と認めざるを得なかったからこの文言を書かざるを得なかった。
A 少なくとも談合行為は犯罪であり、裁判官は債権者が犯罪を告発した者への報復として裁判制度を利用したと認めているのである。
B このような事が許されるならば、国家権力や企業の不法行為を国民が改めさせる訴訟を起こした際、国家権力や企業が、提訴した国民に些細な理由をこじつけて提訴し、報復として攻撃することが許されることになる。本件はまさにその例である。
C これは裁判制度の悪用であり、その趣旨目的に照らして著しく相当性を欠いているのことは疑いがないのである。
(8) 上記(2)Eに関して。
@ すでに述べたように債権者の主張する保全の必要性は虚偽である。
A また被保全権利は時効によって失われており、保全の必要性は全く認めることができないのである。
(9) 財産権の取得。
@ そもそも「立ち入り権の行使」というためには、債権者が債務者の拒絶なく立ち入ったことだけで十分であってそれ以外の要件を必要とするかのような決定の判断は誤りである。
A 予告が必要であるとされるのは、債務者が予期できない立ち入りの場合であって、本件の立ち入りでは警備員が債権者の立ち入りを毎回現認しながらも拒絶しなかったという事実から、そのような性格の立ち入りでないことは明白である。したがって、債権者の立ち入りが「立ち入り権の行使」であることに疑いはない。
B 債権者は、債務者の立ち入り権の行使を、決定において認定したとおり、20年間にわたって放置してきたのであるから、債務者は財産権としての立ち入り権を時効により取得したことは明白である。
3,裁判所が認定、判断を放棄した事実。
(1)原決定は債務者が立証した以下の事実を債権者に偏った決定を書くために意図的に無視したとしか考えられない。@ 債権者職場に現存する深刻な人権侵害の実状、その改善の必要性、緊急性を指摘、立証したのにその事実確認を怠り、無視、放置した。
A 債権者の談合という犯罪行為を立証したのに無視、放置した。
B 債権者が立入禁止と明示し警備員を配置し、立ち入らないように警告した平成13年10月20日は亀井静香氏の座り込み参加とその報道がされたことの直後であることから、それこそがそれらの原因であり、債権者の申立の理由とはなんの関係もないことが明らかなのに、原決定はその事実を無視した。
C また当該地所が「安全確認のために確保された空地」という債権者の主張が虚偽であることを債務者は答弁書において立証したのに、原決定が根拠なく債権者の主張を採用したことは不当と言わざるを得ない。
第2 裁判所の責任
1、言うまでもなく、裁判所は憲法の理念に沿った判断をしなければならない。すなわち、基本的人権の尊重、公共の福祉を常にその念頭において裁定を下さねばならないのである。
2,しかるに原決定は、債権者の「所有権」のみを考慮し、債務者が立証した上記の要件を一切無視したものである。
3,債務者は、債権者による基本的人権の侵害、反社会的犯罪行為の存在を立証した。
4,本件座り込みの目的がこれを改めさせようとするものであることを原決定は認めた。
5,しかし、債権者の「所有権」のみを理由になんら実害のない本件立入を禁止したのである。
6,これによって、裁判所は債権者による基本的人権の侵害、反社会的犯罪行為の存在を知りながら放置したことになることは言うまでもない。
7,また、交通上危険であるとの債権者の本件提訴の理由が虚偽である事を認識し、「債権者の談合行為告発への報復や債権者株主総会をめぐる債務者との訴訟の和解交渉を有利にする交換条件として本件申立てを利用することを考えていた」と認識していながら債権者の利益になる決定を書いた。
9,嘘の理由、嘘の目的で裁判を起こし、嘘を述べ立てた方が勝訴するようなことがまかりとおるならば、国民に対する裁判所の信頼が失墜することは言うまでもないことである。
10,国家や企業など権力を持つものの不正を、国民が指摘して改めさせようとする抗議行動を行い、法的処置を取ることは、憲法によって保障されている。
11,裁判所は善意に基づくこれらの行動を助けなければならない。
12,しかるに原決定は、訴えられた国家や企業が、些細な理由をこじつけて、この国民を報復的に提訴することが許されるとする前例を作るものである。
13,これでは裁判所が国家国民から求められている機能を全く果たしていないことは明白である。
14, 裁判所は債務者の指摘により、それを改めさせる機会を持ちながら放置することにより、既に発生している職場での自殺などの悲劇が再び発生した場合にどのようにも責任が取り得ないことを認識すべきである。
以上