1999年 沖電気工業株式会社株主総会 録音の反訳


録音日時 1999年 6月 29日
録音場所 沖電気工業株式会社 本店別館 株主総会会場
録音者  田中哲朗

 この反訳により証明されることは以下の通りである。説明を容易にするため発言に番号を付した。

@ 原告 田中哲朗は本総会における発言で冷静、丁重、かつ論理的に企業のあるべき姿勢を説いている。被告が主張するような暴言を一度たりとも行っていない。6, 8

A 原告は丁重を期するため原稿を用意している。 6,

B 原告の解雇に関することは全く述べていない。

C 原告は被告職場の人権侵害の存在を指摘している。またこれまでの総会でも指摘してきたと述べている。4, 15,

D 原告は被告株主総会で動員株主が「議事進行!」と叫ぶ、社員株主による議事打ち切り動議、など議事進行の不当性の存在を指摘している。4,13,

D  この発言中に原告の発言を中断させようとした株主(社員株主と思われるが、その証拠はないので主張はしない)を、冷静にたしなめている。10,11,13,

E しかし、差別の状況、総会の不当な議事運営は以前に比べ不十分ながら改善の点が見られるとし、4,

F 篠塚新社長にそれらの改善を期待すると述べている。4, 15,

それに対し篠塚社長は

G 原告が指摘した、差別の存在や不当な議事運営が事実でないと思うなら、それを
否定するであろうにもかかわらず、否定することなく

H 「是非貴重な御意見として承らせて頂きたいと思います。」「ご意見として参考
にさせて頂きます。」と肯定的な答弁を行っており。16,18

I  「すべてお答え出来るかと言うことはあろうかと思いますが、」と少なくとも一部は原告の指摘する問題に対し改善の努力をするかのような発言を行い。18

J 「 一部過分におほめを頂きましてありがたいと思っております。」と礼までの
べているのである。18,


 よって本反訳による被告答弁書の主張に対する反論として

@ 原告は一般株主の前で、被告会社の職場に差別が存在していると指摘し、その改善を求め、社長の考えを述べることを求めているのであるから、差別の存在が事実で無いとすれば、原告の発言は被告会社にとってゆゆしき問題であり、当然それ否定すべきであるにも拘わらず、社長は否定するどころか、「貴重な意見として」「参考にする」と述べ、「すべてお答え出来るかと言うことはあろうかと思いますが、」と少なくとも一部は原告の指摘する問題に対し改善の努力をするかのような発言を行ったのである。


 このことは被告が、原告の指摘する差別の実態が被告職場に存在することを認識しているからに他ならない。

A 原告はこれら差別問題の指摘をこれまでの被告株主総会でも指摘してきたことを述べている。
 被告が主張するように、それまでの原告の総会での主張、被告職場での差別の存在の指摘が事実無根であり、原告の発言が総会を混乱させるためだけのものであったならば、被告はその指摘をするであろうにも関わらず、それをしないばかりか 「貴重な意見として」「参考にする」とのべたのである。

被告の主張が虚偽であることが伺い知れるのである。

B また、被告は原告の行動が「業務妨害」であり損害を被っているから、損害賠償訴訟を起こす旨の主張を行っている。

 原告の被告会社に対する抗議行動はこの総会の時点と現在とは形態が変わっていない。現在損害を被っていると主張するならば、この時点ですでに、損害を被っていたはずである。
 損害賠償請求を起こすほどの損害を被っているのであれば、社長は業務妨害に対する苦情を述べるはずであるのに、それをしないばかりか礼まで述べたことは、被告に損害を被っているとの認識が無いことに他ならない。


以下 反訳


1 篠塚社長(以下 篠塚と記す) 次の質問の方いらっしゃいますか。どうぞ。

2 田中哲朗(以下 田中と記す) 僕ですか。

3 篠塚 あのー、2番のマイクを使って下さい。

4 田中 85番の田中と申します。私は沖電気のような技術を主体として生きていかなければならない企業にとって、のびのびとした技術者の発想、それが生まれるような職場の環境というのが必要である、そういう観点からこれまでいくつか、職場の中における問題点を指摘し続けてまいりました。
 主に、私の立場から言いますと批判という形でやってきたわけですけど。しかしこの間、当社のインターネットのホームページなどを見ておりますと、例えば、企業貢献のボランティアなどという、評価しても良いのではないかと思われるような側面もだんだん会社の中に見られるようになってきたと思います。
 また、篠塚新社長の仕事に対する姿勢とか、あるいは、社員に対する対話の姿勢などは
これまでの社長になかった側面も見られるというふうに、私の友人なども職場の中から言っておりますので、そのへんも期待しておるところであります。
 また、本株主総会の議事の進行のあり方につきましても、何年か前は社員株主が前の方に2列ほど陣取っておりまして、「議事進行!」と威圧的な対応を取るということがあったわけですけど、それが改善され、また、株主がマイクを使えると、こういった点も今回から変えられたようで、これもなかなか良いことではないかと思います。
 これから私の意見を少し交えまして申し上げたいと思うわけですけど、最後に改めて質問という形にはしないつもりですから、新社長がどう感じられたか、考えられているかを私が話した後で答えて頂ければありがたいと思います。
 他の株主さんも、もう発言終わりましたかな。もしかしたらまだ発言される方もおられるかも知れませんので、それほど長くはしゃべりませんけどしばらくご辛抱お願いします。

5 篠塚 出来るだけ簡潔にお願いします。

6 田中 はい、原稿をちゃんとまとめてきましたから、延々としゃべることはありませんのでどうかよろしくお願いします。


 新聞によりますと、社長は、若手は上司にノーと言え、そういうふうにハッパをかけた。これは非常に私も良いと思います。組織というものは上意下達のほうがやりやすいわけですけど、人間というのはミスを犯しますから時として理不尽が生まれる。不合理が生まれて損害が発生するということがあるわけです。私も沖電気の職場におりまして、相手が言っていることが正しいかどうかではなくて、誰が言っているかということでその問題を判断してしまう。上司が言っていればそれが間違っていても通るということを何回か見たような気がするわけですけども、それはやっぱり悪いだろう。


 しかし、上司にノーと言うことは、若手にとっては勇気がいることですね、上司は自分の身にとって、いろいろ不利益なことをする力を持っている訳ですから、それを敢えて上司の意見に逆らってノーと言い続けるのは大変勇気がいる訳です。それをノーと言えというからには、ノーと言っても大丈夫ですよというのを、社長が何か保証していらっしゃるのか、あるいは上司の方にも意識改革をして、部下が自分の考えと違うことを言ったとしてもそれをちゃんと受け止めるだけの教育をなさっているのか。その辺がちょっと気になるところであります。また評価すべきことのもう一つのこととして、沖電気が取り組み始めています社会貢献の活動があげられると思います。


 心身に障害のある人や施設に対して支援を行う。あるいは自然災害を受けた外国に義捐金を送る。こういうことはやはり良いことだと思います。本来企業の目的というのは金儲けなんだと、そういうふうに割り切ってしまうと、これは無駄な行動になってしまいます。しかし、私たち人間一人一人は単に自分が生きていけば良いと言うことではない。


社会の成り行きに責任を持つべきだろうと考えます。社会的弱者に対して支援が出来ると言うことは、弱者に優しいということは、自分にも優しいと言うことである。自分さえ良ければという生き方は当面は利益を得ているように見えても結局は自分の為にならない。これは企業にとっても同じことだろうと思います。ボランティア活動などを行っておりますと社会の仕組みや、それに関連する問題にぶつかります。政治の方にも関心が向かざるを得ないわけです。仕組みが悪いから弱者が困っている。ですから、企業内で社員が関心を持つことを今まで企業は好みませんでした。特に政治を批判するような傾向を持つことを企業は嫌っていたわけですけど、しかし、社員が広い視野を持って世の中を見渡す、その中で社員としての行動を選択していくというのは、これは企業にとっても大切なことだろうと思います。


 机上の空論として天下国家を論ずるのではなくて、現実の人間と共に生きて、その人の立場に立って、その中で、自分が嫌なことは人にもさせない。して貰って嬉しいことは自分が行動して人にもしてやる。こういう姿勢は企業にも求められていることだと思います。かって沖電気にはヒューマニズム経営と言われた時代がありました。しかし、それが故に経営に破綻をきたしたと批判をされまして、ぬるま湯体質として批判された。そういう中で1978年に大量の人員整理が行われ労働争議にもなったわけです。しかしぬるま湯体質というのとヒューマニズムは全く別のものである。甘えによるいい加減な仕事の姿勢が
許されるものでは無いと言うことは当然のことであります。
 
7 篠塚 田中さん出来るだけ簡潔に願います。

8 田中 ええ、もうあとそれほどありませんので。
 ここで、企業は誰のものかということを考えて頂かなければならないわけですけど、企業というのは、法律的には株主のものかもしれない、しかし、現実には役員の方も含めた社員全員のものであるわけです。ですから、企業の目的というのは、役員や、自分が沖電気の中にいてはたして幸せだろうかというふうに考えた場合に、自分は幸せであると言い切れなければならない。あるいは他の人も沖電気の職場の中にいて、沖電気の社員として仕事をしていて幸せだろうかと考えた場合に、それは幸せだと言い切れなければならないと思う訳です。
 もし、そうでないとすれば、企業が利益を追求することが人間の幸せにつながってないわけですから、これは本当の目的ではない。そのへんの考え方というのは日本の企業社会の中で非常に難しいわけですけど、そこを考えるというのは大事だと思うわけです。


 愛社精神ということが言われます。これは一時期すごく要求されたわけですけど、会社を愛するということ、これは会社の中で働いているみんなを大事にするという考えだろうと思います。この愛社精神というのは、私は、愛国心ということに似ていると思います。


国を愛するというのは、国家権力に従順であれという意味で取られた時代がありました。


 かっての軍国主義時代に強制された愛国心は結局国を滅ぼさせてしまったわけです。今この反動で愛国心が日本人の中にない。これは残念なことだと思います。愛国心というのは国を愛することですけどもその国を愛するというのは、その国の体制を愛することではない。あるいはその国の領土を愛するわけでもないわけです。その国を構成している一人一人の人間を愛することであります。そしてその人間というのは自分にとって都合の良い
人間だけ、自分に利益を及ぼす人間だけを愛するのではなくて、すべての人、ものの考え方の違いとか、立場の違いとか、人種の違いとか、障害があるとかないとか、そういうものを乗り越えて、それを尊重して行く。こういう姿勢こそが愛国心であるだろう。そういうふうに思います。

8 篠塚 田中さんもうそろそろ終わりますか。原稿は。

9 田中 ええ、もうそろそろ、もうちょっと。

10 株主 ・・・・

11田中  ええ、もうちょっと聞いてもらえますか。あまりねえ、怒鳴りたくないんだけども、

12 篠塚 田中さん、出来るだけ簡潔に。

13 田中 ええ。いつもね、12時までかかったことは一回もないわけですけど、たいてい議事打ち切りの動議がこのあと出されて、たぶん社員株主と思われる人が出して、それで無理矢理に終わっちゃうわけですけど、時間がない時間がないもっと発言したい人がいるいると言われても実際には時間が、どこで終わらなければならないということが決まっているわけではないわけです。もうちょっと聞いて頂ければありがたいと思います。

14 篠塚 是非簡潔におねがいします。

15 田中  ええ。簡潔に言ってしまえばそういうふうにだんだん沖電気の職場の中も以前に比べれば良くなっている部分もある。しかしまだですね。例えば賃金面を見れば誰が見ても
ちょっとこれは異常ではないかという扱いを受けている人たちが存在するわけです。50才ぐらいになって新入社員と同じような20何万。そういう賃金の人もいます。


ただ私がずっとこの間株主総会で指摘してきましたような、仕事がまったく取り上げられているとかぜんぜん仕事がない人というのはだいぶ減ってきた。あるいは、陰湿ないじめいやがらせというのはだいぶ減ってきているわけです。
 これは評価していいと思います。しかし本質的に、ですね、まだ職場の中で誰が見ても恥ずかしくないような公正な労務管理と言いますか人事といいますか、なされていない。

 私はそういうものが今日本の企業の中にさまざま残っているから、企業の中でのいじめの問題というのも、この間問題になってきたわけですけど、それらが大人の生き方が子供ら中でのいじめの問題にも繋がっているだろうとそういうふうに思います。

今、学級崩壊ということが問題になってきて小さい子供たちが最初から、生き甲斐を見いだせないというか、疲れたような顔をしている。あるいは大人の社会を見ていても 昨年1年間で日本の自殺者が3万人を越えたと言われています。その3万人の内7割以上、8割ぐらいが男です。それも40代、50代の人が大半を占めている。そういう状況の中で、この企業社会というものが、日本社会 に対して非常に悪い影響を及ぼしていると言うことに対して目を向けなければならない。

 そういうことが出来る社長がこんどの篠塚社長ではないかということが私が冒頭申し上げましたことで、私は今回信じたいということで今回参ったわけです。

これまでは沖電気の職場の中でこれまでありました、差別やいじめの実情を一つ一つ具体的にあげつらいまして、厳しく批判することをやってきたわけですけども、今回、あえてそれを申し上げないで、篠塚社長がこれから、私が申し上げておりますことが、完璧に出来なくてもいいと思います。

ただ、その方向だけでも示して貰う。なるべく誰が見てもこれは平等だなと、これは誰が見てもちょっと不自然な扱いを受けている人が存在しないような方向にがんばっていただければ、私も私なりの配慮をしながら、この沖電気とつきあって行きたいと思っております。
以上です。ご静聴ありがとうございます。
(一般株主から拍手)

16 篠塚
 どうもありがとうございました。あのー
 ただいまのお話、あのー、内容の判断は私がさせてもらってよろしいでしょうか。

17 田中
 ええいいですよ。

18 篠塚
 是非貴重な御意見として承らせて頂きたいと思います。あのー、すべてお答え出来るかと言うことはあろうかと思いますが、あのー、貴重なご意見として。
  また、一部過分におほめを頂きましてありがたいと思っておりますが、ご意見として参考にさせて頂きます。どうもありがとうございました。

以上