平成15年(ワ)第2823号 損害賠償等請求事件


 原  告  上  田  恵  弘

 被  告  沖電気工業株式会社

準 備 書 面(2)


東京地方裁判所八王子支部 民事第3部1A係 御中
平成16年4月30日
被告訴訟代理人弁護士   内   藤   貞夫


被告訴訟復代理人弁護士長   家   広明

                    
同弁護士 渡部朋広



第1 原告を退場させた際の状況について


1 この点、第2原告準備書面では、3頁下から8行目乃至4頁上から10行目において主張されており、この点に関する認否は以下のとおりである。


  すなわち、発言を許されていない原告が大声でなお発言を続けたこと、及び1人の警備員が原告の左側から原告を押し出すようにして原告を会議場から退場させたことは認める。


   これに対して、発言を続けている原告のマイクを白手袋をはめた警備員が取り上げたこと、株主の正当な発言権を奪ったこと、原告の席から約5、6メートルで会議場の外であること、及び会議場の外の廊下に出たとたんに警備員が抱え込んだ腕で原告を更に強く拘束した等の主張は全て否認する。


 原告のその余の主張については、まとめ部分において「掴む」「抱え込む」「引っ張る」「突く」という行為が含まれていたと主張しながらも、具体的な経緯を述べた部分ではこれらに該当する行為が主張されておらず、主張内容が曖昧であるため、認否できない。


2 原告は、「発言を続けている原告のマイクを自手袋をはめた警備員が取り上げた。」と主張するが、事実に反する。


 原告は、議長に発言を求め、議長から指名され、会場の係員からマイクを受け取り、4項目に亘って質問を行なっている。その質問の内容は、

@被告の格付けが下げられた原因と責任について、

A被告の当期における損失について、


B被告八王子工場門前における訴外田中の排除(実際は被告八王子工場の敷地内に訴外用中が侵入していたものをその敷地外に退去させたものである)について、及び

C被告八王子工場門前においてビラを配る人がいて、そのビラを被告の社員が受け取らないことについて、

の4項目である。原告は質問が終わった段階で会場の係員に自らマイクを返して着席した。


 その質問に対して、議長は@及びAの質問に対しては「NTTの交換機の需要が減少したこと、それから金融機関関連の統廃合で収益に影響があるのではなかろうか、加えまして、損失のために自己資本が大幅に減少している、とい ったようなことから格付けの引き下げがあったこと」等を回答し、更には新しいブロードバンドの展開、システムLSIの展開、ATM等トップシェアーで 更なる海外生産によるコストダウン等の施策を積極的に実施していること及び収益を拡大し今後マイナスになる条件がないように経営努力をすることにより責任を果たしたいと回答した。そして、上記B及びCの質問については目的事項外であるとして議長は回答しなかった。すると原告はCの質問には答えるべきであると議長の制止を無視する発言をし、更にぼ勝手に立ち上がって大声で答えるべきであるとの発言を繰返した。

この時点においては、原告は議長の指名を受けていないのであるから、当然のことながらマイクを所持している筈がない0その後更に、原告が立ち上がったまま大声で前記のような不規則発言を続け議場の秩序を乱すことをやめないので、議長は原告に対し、再三着席し不規則発言を中止し、静粛にするように求めたが、原告はその指示に従うことなく却って大声で議長の指示に逆った0そこで議長はやむなく次の質問者を指名し、会場の係員から次の質問者にマイクが手渡された。すると、原告は次の質問者である株主が発言できない程大声で回答を求める等の不規則発言をやめないことから、議長は原告に対し、不規則発言を止めて着席しないときは退場を命じることを警告したが、原告はその警告をも無視してなお不規則発言を中止せず着席をしなかった。この間原告の前記大声に亘る不規則発言等の言動に加勢するように訴外田中支援グループのヤジ等が飛び交い会場は喧嘩を極めるに至った。

この状況の中で議長は慎重を期して再度原告に対して着席をせず大声で不規則発言を続ける場合は退場を命ずることを警告した。しかし、原告及び訴外田中に同調する株主らは議長の警告に反して原告と共に立ち上がって大声で不規則発言を止めなかったことにより、議事進行に著しい支障が生じ議場の秩序が維持できない状況となったことから、議長はついに原告に対して退場を命じるに至ったのである。


3 なお付言すれば、総会の会場内における原告の着席位置は、会場入り口から8メートルないし9メートルの位置であり、原告の主張する距離よりも若干長い。


第2 会議場の外における退去強制について


  原告は会議場から退去すれば、退去命令は完了して、更に会社敷地内から会社が退去を強制することはできないと原告は主張するが(第2原告準備書面4頁上から18行目乃至上から23行目)、これは明らかな誤りである。確かに、株主総会における議長の秩序維持権の行使という側面だけをとらえれば、原告に対する退場命令は、会議場からの退場に限られるものと誤解されるかもしれない。

しかし、議長は、同時に被告の代表取締役でもあるから、被告の施設について施設管理権を有しているのであって、原告に対する退場命令は、同時に施設管理権の行使として原告に対して会社施設内からの退去を命じているものである。

つまり、原告が株主として退場を命じられた以上、会場内からの退場は勿論のこと会社施設内にとどまる何んらの正当性も有しないから施設からも退場すべきものである。


従って仮に議長の原告に対する退場命令が原告に対する施設外に退去させるまでのものでないとしても、原告には被告会社施設内にとどまる正当性が存在しないのであるから、会社における担当者らが原告を退去させることができることは当然である。このような理解については、法的には何ら争いのないところであって、この点に関する原告の主張は、合理性がない。


第3 退場命令に従わない原告の行為の犯罪性について


 原告は議長の退場命令に従わない自らの行為について犯罪が成立する余地はないと主張するが(第2原告準備書面5頁下から9行目乃至6頁上から1行目 )、これも明らかな誤りである。
 前記のとおり、被告の施設について施設管理権を有している被告代表者でもある議長からの退場命令が発せられているのであるから、その命令に従わない原告の不作為は、刑法130条の規定する不退去罪に該当するのであって、原告の不退去が犯罪行為に該当することは明らかである。


第4 目的事項について


 原告は、第78回総会において、八王子工場の敷地内に侵入した訴外田中を警備員が敷地外に退去させた件について、当該警備員の行為は被告の社長あるいは役員の指示に基づくものであるか否かという内容の質問を行った。そして、原告は、この質問事項について、被告の事業計画の中に記載されている「あらゆる社会活動が個を中心に公平で安全、確実に行われる」という文言に抵触するから、総会の目的事項の範囲内の質問であると主張する(第2原告準備書面3頁12行目乃至22行目)。しかし、この主張が揚げ足取りのものであることは明らかであり、検討の余地のないものと言わざるを得ない。

原告がこのような強引な論法を用いざるを得ないことからしても、原告の主張が不合理であることは明白である。

 そもそも、株主総会は、会社経営に関する一定の重要事項について株主が審理議決する場であり、特定の個人の権利の救済や社会問題について議論する場ではない。このような株主総会の存在意義について、原告には根本的な誤解があるようである。


第5 第79回定時株主総会(平成15年6月開催)について

第79回総会時の状況に関しては、これを請求原因事実として審理の対象とするか否かを裁判所が留保されているので、その決定をまって認否・反論をする。