平成15年(ワ)第2823号 損害賠償等請求事件
原 告 上 田 恵 弘
被 告 沖電気工業株式会社
東京地方裁判所八王子支部 民事第3部1A係 御中
被告訴訟代理人弁護士 内藤貞夫
被告訴訟復代理人弁護士 長家広明
同弁護士 渡部朋広
第1 第79回定時株主総会に関する原告の主張に対する認否
1 第1 原告準備書面(4頁)「第1原告の主張 3 2003年第79回定 時株主総会での状況」について
原告の座席が会場のほぼ真ん中付近であったこと、議長が退場を命じることがなかったこと、原告が企業の社会的責任に関連する質問を行ったこと、原告 の発言の中に「私、去年、強制排除されました。背広も破られております。」 「それについて社長のほうに私は謝罪をお願いしたい。」という発言が含まれていたこと、議長が「ご退場願いましたのは、議事進行にあたりまして、不規 則発言・その他ご注意を申し上げたわけでございますけれども、十分ご理解が得られなかった。そんなことでご退場をいただいたわけでございます。」と回答したことは認め、その余は否認する。
原告が前年度の定時株主総会における議事進行に関して議長に謝罪を要求したのは、原告の発言の冒頭であり最後ではない。原告の上記謝罪要求に対して議長が上記のとおり回答した後、原告は、
@臨場している警察官の氏名及び着席位置、
A企業の社会的責任、
B八王子工場門前における訴外田中に対する立入禁止措置について
質問を行い、これに対して議長は、
@については「『この総会、株主の皆様の安全を図るということ』で」「万が一に備えて」警察官は臨場していること、
Aについては後記4(1)の通り、
Bについては「直接、本日会議の目的事項ではない」旨それぞれ誠実に回答したのである。
2 第1原告準備書面(5頁)「第1原告の主張 4 原告の主張(3)」
について
全て否認ないしは争う。
3 第1原告準備書面(6頁)「第2 被告の答弁書に対する認否及び反論1
「第2 請求の原因に対する認否」について (3)反論 後段」について
否認する。
4 第2原告準備書面(6頁から7頁)「第一 平成16年2月20日付け被告側準備書面(1)に対する認否および反論 第1の3について」について
(1)「(2)について」と題する部分は否認する。
原告は、「企業の社会的責任」に関して質問したと主張し、その内容について、1)安全で品質のよい製品を提供することにより社会に貢献していくこと、2)環境に配慮して事業活動を改善していくこと 3)関連法規が遵守される組織を構築すること の3つの側面があると主張したうえで、議長の回答からは2)については配慮をしているように伺えたが、3)の点で答弁が無かったと主張しているが事実に反する。
そもそも、当日の原告の質問は、被告の環境問魅への貢献などについての質問であり、上記1)及び3)の観点からの質問は含まれていなかった。このことのついて「関連法規が遵守される組織を構築すること」について原告が質問したにもかかわらず議長が回答しなかったという原告の主張は、事実に反するやのである。議長は、原告の質問に対し、「環境問題への取組みは先程省エネ含めご回答させていただいたとおりでございますが、詳細は年次環境報告書これで取りまとめてホームページに公開させていただいております。また7月の中旬には冊子を発行するということで、取組みの状況をご理解いただくようにしてございます。」と回答し、社会貢献については「1996年から社会貢献推進室を設置させていただいておりまして、グループ全
体で貢献活動に取り組んでございます。」と、市民との関係については「各事業部門におきまして、これは全国に事業部門あるわけでございますけれども、当社と致しましては、市民の皆さんとできるだけ協調する、それぞれの事業所に応じた活動をさせていただいております。」と、それぞれ懇切丁寧に回答している。
(2)「(3)について」は争う。
そもそも原告が主張する謝罪の要求は筋違いの要求である。被告の行為によって原告の上着が破れたものか不明の状況で、謝罪に応ずることができないことは自明の理である。議長が説明したことは原告も認めるとおり、原告が不規則発言を繰り返し行い、再三の注意及び警告をなしたが不規則発言等を中止しなかったため議事進行及び議場の秩序に支障が生じたので退場願った旨回答したものである。この回答によって原告は人格や尊厳が傷ついたと主張するがこれは将に原告が自己の主張のみを正当と確信し、それに反するものを悪とすることを端的に顕しているものと言わざるを得ない。
5 第2原告準備書面(10頁から11頁)「第一 平成16年2月20日付け被告側準備書面(1)に対する認否および反論 第2の3について」について第79回定時株主総会において、原告をはじめとする訴外田中に同調するグループによる議事妨害の不当性を訴え、議事打ち切り動議を提出した株主について、被告が毎年用意する「議事打ち切り動議」用の株主と考えざるを得ないの主張は、否認する。
上記株主は、第79回定時株主総会に出席した良識ある一人の株主であり、「被告が毎年用意する議事打ち切り動議用の株主」というのは、全くの言いがかりに過ぎない。このことは田中グループを除く他の一般株主が多くの迷惑を受け、堪りかねての動議の提出に至った事実経緯を示すものである。
第79回定時株主総会において、訴外田中の同調者であり、訴外田中や原告と一緒になって毎年総会場を混乱させている訴外松野は、原告から二人目に質問をして、「私は、株主の一人として、人として田中さんの解雇撤回、職場復帰を心から求めてやみません。」「この総会に当たって私なりの解決案、和解案を考えてみました。真撃な討論を望みます。1、和解。会社は田中哲朗さんの解雇を撤回する。田中さんは八王子工場の門前行動を中止する。その他の条件は別途話し合う。2、人権監査室の設置。人権監査室を設置し、初代室長に田中哲朗さんを起用する。」と訴外田中の解雇撤回、職場復帰をはっきりと訴えている。しかも同様な発言は毎年の総会において行なっているのである。
このことからも分かるとおり、原告を含む訴外田中の同調者たちが、株主総会の場を、訴外田中の解雇撤回、職場復帰のための運動の場として利用しようとしていることは、誰の目にも明らかである。原告の主張は詭弁というべきものである。このため、「そんな不当解雇の問題に、この場があるのではないのだから。やるのだったら、裁判所かほかの場所で争いなさい。」という上記株主の発言は、良識ある一人の株主の発言として、至って自然な発言と言える。
第2 第79回定時株主総会に関する被告の主張
1 目的事項に関係しない質問の連発
第79回定時株主総会において、原告は、約12分間にもわたって質疑応答を行っているが、原告の質問の内容は、以下のとおりである。
@前回の株主総会において退場処分を行なったことについての謝罪要求についてA臨場している警察官の氏名と着席位置について
B社会的責任投資について
C八王子工場門前において訴外田中に対する立入禁止措置について
@、A及びCの質問は、いずれもそれ自体、明らかに会議の目的事項に関係しない質問である。また、Bの質問も、Cの質問を行うための前提として質問しているに過ぎない。
原告は、Bの回答に続けて「八王子の工場の門前に、去年あたりから立入り禁止というものが登場しまして、田中さんがそこにずうっと20年間やっていることに対して、強制排除しようとしている。」「どうしてそういうことを突然になって強制排除のような枠を設けるのか。これはやっぱり先程から社長さんおっしやつたように、よき会社というものを目指しているんだったら、そういう嫌がらせみたいな形をとっていただきたくないんですよ。」「社員の方は朝一生懸命入りますよね、警備員さんが敬礼をして迎えてますよ。しかし、つまり田中さんは嫌がらせみたいなことをやらされている。なんかおかしいと思うんですね。そのことについてお聞きしたいと思います。」と質問した。
原告は、良き会社を目指すのであれば訴外田中の被告八王子工場門前での活動を排除すべきでないという持論を有しているようであり、このような持論をCの質問で展開するにあたり、その前提としてBの質問を行ったに過ぎないのである。なお、議長はこれに対して「直接、本日会議の目的事項ではないというふうに思いますが」と前置きをした上で、「会社の敷地内に不法に侵入される、これはだれであれ敷地外に出ていただく。これは企業として当然の行動だというふうにご認識いただきたいと思います。」と当然の回答をしている。
2 その他の妨害行為
第79回定時株主総会においては、訴外田中及び原告を含む訴外田中に同調するグループの株主たちは、開会直後より、議長の指示を無視し、立ち上がって大声で不規則発言を繰り返し続けた。このような議事妨害行為は、議長による議事運営ルールの説明、監査役による監査報告、議長による報告事項の報告及び事前質問に対する回答が行われる間、40数分間にわたって続けられた。原告も、訴外田中に同調するグループの一員として、上記の議事妨害行為に加わっていた。
3 まとめ
上記のとおり、原告は、第79回定時株主総会において、会議の目的事項とは無関係の質問を繰り返し行ったうえ、議長の指示を無視して不規則発言を繰り返すなど、著しい議事妨害行為を継続的に行っていたのである。仮に原告の社会的評価が低下したとすれば、その原因は、会議のルールを無視した傍若無人な振る舞いを繰り返した原告自身にこそあると言うべきである。