平成15年(ワ)第2823号 損害賠償等請求事件
原 告 上 田 恵 弘
被 告 沖電気工業株式会社
第1原告準備書面
2004年 1月30日
東京地方裁判所八王子支部 民事第3部1A係御中
原 告 上 田 恵 弘
原告は、次の通り、弁論を準備する。
第1 原告の主張
1 原告意見陳述
私は長らくいわゆる地方公務員として過ごしてきましたので、大会社の経営の仕方とか、そこに勤務している人々の様子などはほとんど分かっていませんでした。
私の住んでいる家から歩いて5分ぐらいの所に沖電気工業株式会社八王子事業所がございます。ある日、もう10年も前のことですが、私が休暇か何かのときだったかその会社の門前で、私は非常に驚くべき状況を目撃しました。3人の人がビラを出勤途上の会社員に手渡そうとしていました。そろそろ寒くなる頃だったと記憶にありますので、ボーナス闘争に関するビラかと思われるのですが、会社の門に吸い込まれるように入っていく人たちは誰1人としてその紙を受け取らない。その人ちの顔はまるで能面か何かのように生気が感じられずロボットの行列を思わせるものでした。
そのことは私に佐高信の言葉、「日本の会社に1歩入るとそこには憲法は存在しない」を思い出させました。この会社に働く人たちには、1枚のビラを受けとる自由も、それを読んで考えることも許されないのだ、という現実を突きつけられたように思いました。
縁があって私は田中哲朗さんと知り合いました。田中さんは沖電気の門前に立って出勤してくる人たちや会社役員氏の皆さんにたいし、いじめやいわれなき差別をなくそう、会社に基本的人権を確立しよう、とすでに22年以上にわたって訴え続けている人です。その田中さんから、もう10年以上前から株主総会に出席して会社社長に直接意見を述べ、その中のいくつかは認められてきた、ということを聞き、では私もと、2001年、2002年そして2003年と過去3回株主総会で質問や意見を述べてきました
。
2001年に田中さんは強制退場させられました。私はただ見ていました。2002年、田中さんは「株主総会の日時が他の多くの会社と同日なのはよろしくない、別の日に変更してほしい。これをここで採決してくれ」と提案しましたが議長(社長)は「その必要なし」と採決しようとはしません。田中さんが「採決せよ」と訴え続けたところ議長は「退場」と社員(警備員)に命令しそこで田中さんは屈強な警備員たちに暴力を用いられて強行排除されてしまいました。
強行連行されるとき田中さんは、手に1枚の診断書をもち「いま肩を痛めて病院通いの身である。暴力はやめよ」と訴えたのに全く無視されてしまったのでした。発言順がきて私は「先に排除された田中さんは八王子事業所門前で、守衛から押されたとき肩を痛めたのである。誰が田中さんを追い出せと命じたのか、責任者は誰なのか明確にしてほしい。会社は田中さんに誠意を持って答えてほしい」と会社の不当なやり方に抗議しました。抗議し続けたところ議長(社長)は「退場」と私は先ほどの屈強な警備員たちに暴力排除されました。
強行連行され会議場の外へ出されたのを見た田中さんが「上田さん、上着が破かれてるよ」と教えてくれました。そのとき撮った写真が甲1号証です。
2003年6月の株主総会で、上着が一部分破かれたことに対して、私は社長の見解を質しましたが社長は「目的事項にあわないことを言い続けたので退場して頂いたのであって問題ではない」という趣旨の発言に終わってしまった。かくして私は「これは訴えるしかないのか」と考えたのです。私の訴状を見た会社側はなんと「上田の訴えはいいがかり的である」と的の字は使ってあるものの、上着の破損さえ認めない答弁書を出してきました。
2002年は虫けらのごとく摘み出され、2003年には抗議の一切を無視され、そして今言いがかり奴めと、都合三度の侮辱,謗りを私は受けたのです。これは決して許せることではありません。
ここに「株主総会の進め方」という本があります。(日経文庫)。弁護士さんの著作です。その中に株主総会の目的はSR精神にある、即ちShareholder
Relations「経営者と株主との間の有意義な関係を築くこと」だと。沖電気の株主総会時の議事運営や社長見解はSR精神に反しています。
そこに座っておられる優秀な弁護士さんたちは、会社側が要求するままに「言いがかり」などと答弁書に書かないで民法第1条にいうところの「信義に従い誠実にこれを為す」の精神でこの裁判に当たっていただきたいし、裁判の流れがそうあってほしいと願って、意見陳述といたします。
2 2002年第78回定時株主総会での状況 (別紙陳述書)
3 2003年第79回定時株主総会での状況 (別紙陳述書)
4 原告の主張
原告の主張は訴状において述べた通りである。
(1)被告会社は、株主である原告に対し、2002年株主総会において、株主としての原告の発言権を奪い、強制的に暴力を用いて退場させ、その結果、原告の持ち物である着衣に修復不可能な損傷を与えたものであり、明らかに違法である。
(2)被告代表者による2002年株主総会での議事運営は、原告が非常識かつ理不尽極まりない悪人であるかのような印象を当日の出席株主たちに与え、原告の名誉と尊厳を著しく傷つける行為であり、明らかに違法である。
なお、被告会社は、2003年株主総会においては、上述したような強制的に暴力を用いる行為を控えるように努めていることがうかがえる。これは、被告自らが2002年株主総会での行為の違法性を自ら認めたものに他ならない。
(3)被告代表者による2003年株主総会での議事運営は、原告の2002年株主総会における被告会社の行為に対する質問に対し、何ら誠意をもって答えていない。このような行為は、原告の人格と名誉を再び傷つけるものであり、明らかに違法である。
(4)よって、原告は、被告沖電気工業株式会社に対して、@ 民法709条、 723条に基づき、別紙記載のとおりの謝罪文の交付を求め、A 民法709条、710条に基づき、金100万円及びこれに対する2002年(平成14年)6月27日より支払い済みに至るまで民法所定の年5分の割合により遅延損害金の支払いを求めるものである。
第2 被告の答弁書に対する認否及び反論
1 「第2 請求の原因に対する認否」について
(1)被告は、原告が訴状で述べていないことについてまでも認否しており、明らかに失当である。例えば、「2 2について」において、被告は、「原告が不規則発言を繰り返したことから被告代表者がその中止を求めたこと、再三にわたって中止を求め退場の警告を発したにもかかわらず原告が不規則発言を止めないことから被告代表者が原告に対して退場を命じたこと、及び退場を命じたにもかかわらず原告が不規則発言を止めないことから被告代表者が警備員に命じて原告を退場させたこと」を認め、「3 3について」において、「2003年時第79回定時株主総会において原告が発言したことの中、環境問題に関する発言以外はいずれも会議の目的外事項に関する発言であったこと」を認めているが、原告は訴状においてそのようなことは述べていない。
(2)認否
「被告代表者が原告に対して退場を命じたこと」「警備員に命じて原告を退場させたこと」は認め、その余については、否認ないしは争う。
(3)反論
被告は、2002年株主総会において「原告が不規則発言を繰り返した」「被告代表者が退場の警告を発したにもかかわらず原告が不規則発言を止めない」と主張しているが、原告が不規則発言をしたことは一切なく、被告の主張は失当である。
被告は、2003年株主総会において「原告が会議の目的外事項に関する発言を行った」と主張しているが、原告が会議の目的外事項に関する発言をしたことは一切なく、被告の主張は失当である。
2 「第3 被告の主張」について
(1)認否
全て否認ないしは争う。
(2)反論
(a)被告の「1」における主張は、原告に対する根拠のない偏見と憶測に基づくものである。
原告が「被告に対して著しい偏見と憶測を持っている」こともないし、「訴外田中を復職させること」のみを目的として出席していることもないし、「総会の目的外事項に関する質問や意見表明を繰り返し行っている」こともないし、「総会議場内で激しい口調で暴言を発したり」することもしていないし、「総会議場の徘徊を繰返して被告の株主総会の適正な進行を妨害し」していることもないし、「議場内の秩序を乱し続けている」こともない。そもそも、原告は2002年株主総会において初めて発言したのである。
これは被告会社の一株主に対する見解として極めて不適切であると共に、原告の名誉を毀損するものであり、直ちに撤回を求める。
(b)被告は「2」及び「3」において、訴外田中哲朗氏について、縷々述べているが、それが本件訴訟といかなる関連があるのか不明である。また、訴外田中哲朗氏に対する被告の主張も、根拠のない偏見と憶測に基づくものである。
(c)被告の「3」における原告に対する主張は、原告に対する根拠のない偏見と憶測に基づくものである。
原告が「毎年、不規則発言や会場内の徘徊などを繰り返している」こともないし、「被告の定時株主総会の運営を妨害し続けている」こともない。ましてや、本件訴訟が「被告の総会運営に不満を持つ原告が提起した言いがかり的な訴訟」であることは断じてない。
これは被告会社の一株主に対する見解として極めて不適切であると共に、原告の名誉を毀損するものであり、直ちに撤回を求める。
(d)被告は「4」において、被告社員の行為の存在、着衣の損傷の発生について否認しているが、上述したとおり、原告の着衣が、被告社員による暴力的な排除により損傷したことは疑いがない。また、着衣が2002年株主総会以前から損傷していたという事実もない。
第3 求釈明
1 「第2 請求の原因に対する認否」について
(a)原告が「不規則発言を繰り返した」とあるが、どんな発言を繰り返したのか明確にするよう求める。
(b)被告代表者が「原告に対して退場を命じた」ことの法的根拠を明らかにすることを求める。
(c)被告代表者が「警備員に命じて原告を退場させた」ことの法的根拠を明らかにすることを求める。
(d)原告が発言したとされる「環境問題にかんする発言」とは具体的にどんな発言であったかを明確にすることを求める。
(e)原告が発言したとされる「会議の目的外事項に関する発言」とは具体的にどんな発言であったかを明確にすることを求める。また、何故その発言が「会議の目的外事項に関する発言」であるのか法的根拠を明らかにすることを求める。
2 「第3 被告の主張」について
(a)「1」において「被告に対して著しい偏見と憶測を持っている」とあるが、そのように主張する具体的根拠を明らかにするよう求める。
(b)「1」において「田中を復職させることを目的に出席している」とあるが、そのように主張する具体的根拠を明らかにすることを求める。
(c)「1」において「その為の発言は勿論のこと」とあるが、具体的に原告のどの発言をさして主張しているか明らかにすることを求める。
(d)「1」において「その他総会の目的外事項に関する質問や意見表明を繰り返し行っている」とあるが、具体的に原告のどの発言をさして主張しているか、また、その発言が総会の目的外事項に関するものである理由を明らかにすることを求める。
(e)訴外田中哲朗氏と本件訴訟との関連性について明らかにすることを求める。
(f)「3」において「毎年、不規則発言や会場内の排掴などを繰り返し、被告の定時株主総会の運営を妨害し続けている」とあるが、原告のどの行為をさして主張しているのか明らかにすることを求める。
3 被告撮影のビデオについて
原告は、被告が2002年株主総会の模様及び2003年株主総会の模様を全てビデオにて撮影していることを承知している。事実を明らかにするために、この撮影したビデオを裁判所に提出することを求める。ただし、被告が都合よく編集したものを提出する可能性を否定できないので、未編集の撮影ビデオを提出することを求める。
証拠方法
1 甲第2号証
2004年1月14日撮影の原告の上着の写真
2 甲第3号証
2002年6月27日の録音の反訳
3 甲第4号証
田中哲朗 陳述書
4 甲第5号証
警備員による強制排除の写真
5 検甲第1号証
損傷された原告の上着
6 検甲第2号証
甲3号証の録音データ