平成15年(ワ)第2823号 損害賠償等請求事件
原 告 上 田 恵 弘
被 告 沖電気工業株式会社
東京地方裁判所八王子支部 民事第3部1A係御中
原 告 上 田 恵 弘
第1 平成16年6月30日付の準備書面(3)に対する認否および反論
1 第1の1について
否認ないし争う。
被告は、原告が第1原告準備書面において述べていないことについてまでも認否しており、明らかに失当である。認否とは「原告の主張する要件事実や重要な間接事実について、被告がどの点を争い、どの点を認めるのかを、明らかにすること(司法修習所編「民事弁護の手引」)」である。被告は、認否と主張を区別されたい。第1原告準備書面の第2の1(1)においても同様な指摘をしている。それにもかかわらず、同様なことを繰り返すのは、議論を混乱させようとする意図的なものとしか思えない。
2 第1の4(1)について
否認ないし争う。
被告は、原告の「企業の社会的責任」に関しての質問は被告会社の環境問題への貢献についてのみであり、それも田中哲朗氏についての質問の前提としてとらえているが、これは被告の偏見に基づくものであり、事実に反する。
現在「企業の社会的責任(CSR)」は経団連も非常にこのことを重視して「行動憲章」を改定したように(日本経済新聞2004年5月18日)企業の存続にかかわるものとなっていて、当沖電気もそのCSRについては対応が十分為されている必要があるのではないかとの観点から質したのであった。回答のなかでは環境面についての取り組みには評価すべきものがあったが、その他については不十分であって不満が残った。
3 第1の4(2)について
否認ないし争う。
原告の上着の破損に対する「謝罪要求」は筋違いとの被告の主張に反論する。
被告は「被告の行為によって原告の上着が破れたものか不明の状況で、謝罪に応ずることができないことは自明の理である(準備書面(3)第5頁)と平然と主張している。しかしながら、もし、被告が「誠実な会社」であるなら、自社の株主の主張に対して、少なくとも「その上着を十分検証させて頂いてから回答させてほしい。」程度の趣旨の発言をするのは当然である。ここに現れた当会社の不誠実、無責任さに原告の人格と尊厳は打ち砕かれ、もう残るは訴訟しか道はなくなったのである。
被告のいうここでの原告の不規則発言とは「八王子事業所門前での田中氏への暴力排除を警備員に命じた責任者は誰か。答えてほしい。」というものである。社会倫理を守り社会からの信用を築き上げる(「沖電気行動規範」2002年1月1日制定。甲第12号証)という会社にあってはならない暴力行為が多くの出勤社員の眼前で行われているのを原告は看ているのである。原告はただそのような暴力行為の責任者を質したのである。そのような当然の質問に対する回答を求め続けて排除されたのに対して抗議することは不当であって、暴力排除することは当然であるとでもいうのであろうか。
4 第1の5について
否認ないし争う。
被告は「議事打ち切り動議」を出した株主は良識ある一人の株主であり、「議事打ち切り動議」提出用の者ではないと主張する。
一般株主が多くの迷惑を受け堪りかねての動議提出だというが、その具体的根拠は何かについては「訴外田中に同調するグループによる議事妨害の不当性」を主張するのみで、どんなことがどのようにして行われ、それによりどのような迷惑になっているかの実証が全くなく主張の体をなしていない。
田中氏の「同調者松野」氏の「田中さんの解雇撤回。職場復帰を心から求めてやみません」という言葉が即原告のそれであるかのように述べ、株主総会の場を「訴外田中の解雇撤回、職場復帰のための運動の場として利用しているから」、打ち切り動議提出株主の「やるのだったら、裁判所か他の場所で争いなさい。」のことばを良しとしている。しかしながら、原告は、既に述べたように、田中氏の職場復帰や解雇撤回を要求していないし、願ってもいないし、そのための発言もしていない。
この株主総会では、議長により既に約束されて質問の時を待っていた株主が相当数いたのにもかかわらず、勝手に「審議は十分尽くされた」と強制的に終了したのである。このような一般株主の発言の機会を切り捨てるやり方は、株主総会の大きな目的であるCSR精神、即ち「経営者と株主間の有意義な関係を築くこと」に反するものである。議論を尽くすことなく一刻でも早く株主総会を終わらせようとするだけの動議提出者は、被告側の意に沿った株主すなわち用意されていた株主といっても過言でないことは明白である。他の会社において、株主総会が10時間にも渡って開かれた例をあげるまでもなく、株主の質問する権利は保障されるべきもので、先のCSR精神からも要請されるべきものである。被告の主張は、社会における企業として求められるCSR精神に反するものである。
ここで被告から言及のあった株主松野氏(松野哲二氏)に触れたい。松野氏は、三多摩の地を中心にして人権問題に深く取り組んできている一人であり新聞でも報道された「学校・職場のいじめホットライン」設立者であり、在日朝鮮人へのいじめや迫害に対する「チマ・チョゴリ友の会」を立ち上げた人である。現在も両活動を献身的に続けておられる。
被告は、松野氏をあたかも株主総会を混乱させるために出席しているならずもののごとく主張しているが、松野氏は人権問題に深い洞察を持つ人物であり、人権侵害の続く、被告沖電気の会社内にも憲法の精神が生かされるよう願って株主総会で発言しているのである(甲第13号証参照)。
5 第2の1について
否認ないし争う。
被告は、原告が目的事項に関係ない質問の連発をしたと主張しているが、これについて反論する。
この株主総会において原告は次のような質問をした。
(1)退場処分を受けたうえ、その強制排除執行時に上着を1部損傷させたことに謝罪を求めた。
通常の社会通念に照らして、そもそも「退場」を命ずる事が出来る場合とは、議場における暴力行為や物を投げつける等の行為があった場合か、その恐れが十分予想される場合に限られるものであり、原告のように「門前で強制排除をせよと命じた責任者は誰か?」と回答を要求し続けた者にたいしての「退場」命令は社会通念に反する違法なものである。
これに加えて、着衣の一部損傷があったのは不当であると訴えるのは、先の沖電気行動規範(甲第12号証)に照らして当をえたもので、これは目的事項(営業報告)(株主総会招集通知第4頁)にかなっている。
(2)臨場している警察官の氏名と着席位置についての質問をした。
世に総会屋なる者が存在し株主総会を荒らし回り裏で金品その他を要求するということがあったし、現にニュースでも取り上げられているが、沖電気でもそれを予想して警察官の臨場を要請したのかは問わないが、この前年の第78回総会では冒頭に議長がはっきりと「ここに警察官が立ち入っている」旨の報告があったのに、第79回株主総会ではなかったので確認しただけのことである。総会屋なる者が例年出席していない場所に警察官が臨場しているのなら自ら名乗ってその存在を明らかにしたほうがよいのではなかろうか。
(3)社会的責任投資(SCR)について質問
すでに触れている所であるが再説する。これについては経団連のほか地球環境サミット等で討議され、アメリカ企業や日本の企業不祥事を受けてSCRの国際的な規格作りを進める必要があるという世界共通の認識に達していて、沖電気も甲第12号証にみるごとく規範ができている。原告の質問時に、もしこの件にかんして深く認識していたならば議長(社長)は沖電気行動規範を提示して出席株主に「我が社は、社会からの信用を築きあげ」「すべての人の基本的人権を尊重し、性別、年齢、国籍、人種、民族、信条、社会的身分、宗教、身体障害の有無などによる差別や個人の尊厳を傷つける行為を行いません」と誇れば良かったのではないか。環境問題に対する取り組みだけの説明に終わったのは残念という次第である。これについてふれなかったのは自ら作った規範を自ら踏みにじっていることに気付いてのことだったかと思わざるを得ない。
(4)八王子事業所門前において訴外田中にたいする立ち入り禁止措置について
訴外田中哲朗氏は過去22年を超えて毎朝沖電気工業株式会社八王子事業所門前に立ち、会社内における人権差別やいじめの存在を指摘し、憲法の保証する基本的人権が従業員一人一人にいきわたるようにとの願いを訴えてきている。
ところがある日突然、いままで一般の人たちが行き交うことの出来る通路状になっていた所に金鎖が張られ立ち入り禁止の札がぶらさげられた。この措置を看て原告は「嫌がらせのような形」と感じ、このことを社長はどう見るか、と尋ねたのである。
更に付け加えれば、原告は2002年1月29日に会社警備員が田中氏を実力で押し出そうとしているのを目撃している。朝の出勤従業員の目前でもある。社会から信用を築き上げるどころか信用を根こそぎ失うようなことになってしまう。以上見てきた通り、原告の上述した4つの質問(1)〜(4)は、株主総会の目的事項に適うものばかりであり、これを目的事項に関係しない質問の連発などというのは質問者たる株主を侮る言いぐさである。
そして「原告は約12分にもわたって質疑応答を」行ったと時間が長いことを批判めいてのべているが、このときは1問1答形式をとっていたため回答までも含む時間であり、特に時間制限も課せられていなかったのであり、このように非難されることではない。
6 第2の2について
否認ないし争う。
被告は「原告も訴外田中に同調するグループの1員として、議事妨害行為に加わっていた」と主張する。ここで、原告は、どのような行為を原告がとって議事妨害をしたのかの検証をするために第79回株主総会において会社が撮ったビデオの提示を求める。これを検証すれば被告の主張が誤りであることは明白となる。
被告は「訴外田中に同調するグループの株主たちは、開会直後より、議長の指示を無視し、立ち上がって大声で不規則発言を繰り返し続けた。」と主張する。
事実は以下のとおりである。
すなわち、会議の冒頭、疎外田中が依頼した弁護士、大口昭彦が前年の総会において疎外田中が暴力で排除されたことをふまえ、「議事の中で暴力を行使しないで欲しい」といういわば議事運営に関する当然の動議提案を出そうとしたことによる。
被告会社は、大口氏が弁護士であることを告げられ、また、「議事の中で暴力を行使しないことに関する」という内容が聞こえているはずであるにも拘わらず、「不規則発言を止めろ」「着席しろ」としか答えなかった。
この様に、被告が「妨害行為」あるいは「不規則発言」とするものはほとんどが、議事に於ける被告の不誠実な、あるいは違法な対応に対する抗議なのである。被告自体が「混乱状態」を演出しているとしか考えられない。
また「議事の中で暴力を行使しないで欲しい」といういわば、会議に臨む者の当然の、それも弁護士という法的資格を有する者を通じての提案すら拒絶する被告の対応は、被告の株主総会に臨む姿勢を象徴的に顕しているのである。
さらに付言するならば2004年6月29日に開催された被告会社の第80回株主総会に於いて、被告会社はまたもや疎外田中を暴力で排除した。
80回総会に於いて田中が強制排除された際に行っていた質問は明らかに「招集通知」に記載された「目的事項」であった。
すなわち被告従業員が起こした贈賄事件(大分県湯布院町の防災無線事業を巡り、被告従業員が同町長に対し300万円の賄賂を送った事件。2004年3月大分地裁、有罪確定)によって被告が受けた損害額をいくらと算定するか、というものであった。(甲号16号証)
この質問に被告は答弁を拒否し、拒否の理由すら説明しなかった。その対応に納得がいかないと抗議する田中を10名ほどの被告警備員が取り囲み、田中を体ごと持ち上げ、物を運ぶように会場から放り出したのである。
被告は原告の質問に答えなかった理由をそれが目的事項以外であるとし、回答に答えないことを抗議する原告を強制排除したことを議長の議事整理権を理由に正当化している。
しかし、80回総会においての疎外田中の質問は明らかに目的事項であったのに関わらず、その答弁を拒否し、抗議されると強制排除を行ったのである。
被告は自らの不祥事を指摘されるとその答弁を拒否し、さらに追求されると株主を放り出すことを常習としていると言わざるを得ない。
その質問が「目的事項」であってもなくても同様の対応を取ることが80回の総会で証明されたのである。
7 第2の3について
否認ないし争う。
被告は「会議の目的事項に無関係の質問を繰り返し行っている」というが、上述したように原告が行った4つの質問(1)〜(4)は、さきに実証したように、すべて目的事項に適う性質のものである。
また「著しい妨害行為を継続的に」行ってもいない。被告のいう「傍若無人」の振る舞いとはなにを指すかまったく不明である。「社会的評価がさがるのは当然だ」という結論は、原告の人格を侮辱していて許し難い。
原告の質問を要約して言えば、憲法に定められている基本的人権が社会的企業たる被告のなかにおいて確立されているか、被告が厳正な企業倫理のもとで社会から信用を築きあげている存在になっているかどうかを尋ね求め、確認したいというものであって他のなにものではない。
第2 未だ釈明不十分の件について
1 第1原告準備書面の第3の1(第7頁)に関係して
(a)「不規則発言を繰り返した」とあるが、具体的にどの発言が繰り返されたのかを明確にされたい。
(b)「原告に対して退場を命じた」が会場外ではなく玄関まで排除したという法的根拠を条文をもって示されたに。
(c)被告のいう78回総会の「目的事項」のなかに「コンプライアンス(法律遵守)」−第80回定時株主総会招集ご通知(第4頁)(甲第14号証)−は含まれているのか否か。
2 第1原告準備書面の第3の2(第8頁)に関係して
(a)答弁書の「第3被告の主張」の1において「原告は、被告に対して著しい偏見と憶測を持って」というが、原告のいつのどの発言がそうなのか、を明確にされたい。
(b)被告は、原告が「田中を復職させることを目的にしている」とあるが、原告のどの発言がそれなのか、明確にされたい。
(c)被告は、原告が「毎年、不規則発言や会場内の徘徊を繰り返し株主総会の運営を妨害し続けている」と主張するが、原告が徘徊しているとする現場を、被告撮影の第79回総会のビデオを証拠として立証されたい。
第3 被告側提出の報告書並びに総会場見取り図に関係して
第78回定時株主総会会場の説明図(見取り図)が被告から提出されたのを受けて、原告が提出した先の陳述書(平成16年1月24日付け)に補充するものとして、新たに陳述書を作成し、総会場からの強制排除時の前後の状況について詳説し提出する。(甲第15号証)
第4 まとめ
1 沖電気工業株式会社に関心を抱いた動機
原告はかつて20年ほどに渡って毎朝沖電気八王子事業所の門まえの道路を駆け抜けて職場へ通っていました。ある朝、労働組合員の配るビラを誰一人として受け取らないのをみてその異常さに驚き、企業に一歩入るとそこは憲法番外地であるという鎌田慧のルポにおける言葉通りであると実感しました。このことが被告会社に強く関心を抱くきっかけです。
2 沖電気株主総会出席状況
(1)一回目 2001年第77回定時株主総会
原告は上記ビラの件をどう思うかということ、八王子事業所からかつて有害排水が出て問題になったことについて質問しました。
(2)二回目 2002年第78回定時株主総会
訴外田中氏のあと原告も強制排除をうけました。このとき、上着が破損されました。
(3)三回目 2003年第79回定時株主総会
社長は原告の謝罪要求を受け付けず原告の人格と名誉が傷つけられ、原告はそれを回復するために提訴しました。この年の株主総会では誰も排除されませんでした。
(4)四回目 2004年第80回定時株主総会
原告は議長から指名されず質問できませんでした。株主三人が「退場」を命じられましたが、今回は会場外の廊下までであり玄関までは排除されませんでした。被告は第78回定時株主総会での強制連行排除行為は違法であると自ら気がついたと思われます。
3 被告沖電気の当事件での違法行為
被告の違法行為をまとめると次の通りである。
(1)原告の質問が目的事項でないとして回答せず、なおも要求し続けている株主を強制排除させ、質問権、回答要求権、議決権等を奪ったこと。
(2)仮に「退場」命令が有効であるとしても、それの及ぶ範囲は総会議場だけであるにもかかわらず、はるか数十メートル離れた玄関近くまで強制連行したこと。
(3)強制排除途上で警備員が原告の上着の一部を損傷したこと。
(4)原告の謝罪要求を無視し、社会通念上では少なくとも「十分検証したあとお答えします」と誠意を持って答えるべきところを一方的に拒否し、原告の人格、名誉尊厳を多数の人々の前で傷つけたこと。
4 原告の願い
公正な裁判を願い、併せて沖電気工業株式会社が社会に信用される存在になることを願う。
原告は第1原告準備書面で述べたように本件が民法第1条にいうところの「信義に従い誠実にこれを為す」の精神で最後まで裁判がおこなわれることを願いつつ、併せて、被告沖電気が自ら作成の「沖電気行動規範」にうたわれている如く「社会からの信用を築きあげ」憲法の保障する「すべての人の基本的人権を尊重する」それこそ名実そなえた大企業として存在し、発展することを期待するものである。
以上